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組織が必要とする文書

文書化の目的


文書化の最大の目的は『共有化』です。
文書とは、『今何らかの作業を行っている自分』と、『自分以外の誰か(未来の自分自身も含む)』とが、『ある業務を同程度に理解できるようにする』ために情報を共有するもの、といえます。
誰とも何も共有する必要がなければ、文書は必要ありません。


第三者と共有する文書

ISOにおける文書において、大切な目的のひとつは、第三者(審査機関あるいは顧客)に対し、組織のルール(システム)を共有してもらうことです。
ISO認証取得の際は、作成した文書が審査の主な対象となります。

このことから、文書とは審査のために作るもの、と解釈されることもありました。
従来の「品質マニュアル」の中には、単にISO規格をそのまま組織の規格にしたものや、審査のための文書で終わっているというものも見られました。

『ISOは手順書や文書をたくさん作らなければいけない』と思い込み、苦労した事務局の方も多いと思います。
本来のISOの目的は文書を作ることではないのですが、どうしてもこのように誤解される傾向にありました。

品質マニュアルの作成が必須ではなくなったのは、形だけのISOではなく、マネジメントシステムとしてきちんと活用できるようにするためです。

また、次に説明しますが、「組織が必要と判断した文書」を作成することが求められており、「何がともあれ、手順書を作成してください」ということはなくなりました。


組織が必要とする文書

2015年版の規格において求められているのは、
・ISO規格が要求している文書
・システムの有効性のために必要であると「組織が決定した」文書
の2つです。

2015年版では後者が優先されていることが明確になりました。
つまり、手順書を何でも作るのではなく、自社の中で手順書にするのは何かをはっきりさせることが重要だということです。
必要な手順書だけに絞ることが可能だという解釈もできます。

とはいえ、組織が必要とする文書とは、どういったものでしょうか。


文書化の『位置づけ』を知る

組織が必要とする文書を考えるために、まずは7.1〜7.4の流れを確認してみましょう。

7.1:組織に必要な資源を明確にする(知識を含む)
7.2:資源を運用するために、必要な力量を明確にし、教育する
7.3:技能だけでなく、必要性を理解させる
7.4:正しく理解された人に、適切なコミュニケーションを行う。

しかし、教育やコミュニケーションだけでは共有できないものもあります。
そこで、文書化です。

7.5:教育やコミュニケーションで理解できないスキルやノウハウについて文書化する

つまり、
(1)文書化しないと共有できないもの
(2)文書化しなくても共有できるもの
これらを明確にし、(1)については文書化し、(2)については『何らかの形』で
共有するようにします。

組織の中で、何が(1)で何が(2)なのか、判断するのは難しいと思いますが、以下、いくつかのポイントを述べたいと思います。


知識を共有するための文書

組織に作業手順や管理の記録があったとしても、曖昧になっていた部分があれば、規定書、標準書作りを行います。
個々のノウハウを共有化し作業手順を明確にすることで、誰もが同じ手順で作業できるよう標準化、効率化が行われ、時間や作業工程のムダも省けるようになります。
そうすることによって、新入社員、派遣社員などが入ったときや、アルバイトやパート社員が多かったり、人の入れ替わりの激しい職場でも、短期間で他の社員と同様の作業を行えるようになります。
これが「共有化」の基本です。


「言っただけで伝わらないもの」を共有するための文書

教育や周知活動で伝わらない部分について、確実に共有化するためにも、文書はあったほうが良いでしょう。

例えば、私が住む福岡市では「燃えるゴミ」と書かれた指定袋があり、「燃えるゴミ」はその袋に入れて捨てることになっています。
燃えるゴミの回収日も指定され、啓発活動も行われていますから、「教育(周知)」を受けた市民は皆、それを守っています。

さて、このメルマガは全国の方が読まれていると思いますが、福岡市以外にお住まいの方、「燃えるゴミ」とは、例えばどんなものかわかりますか?
いちいち書くと誌面がもったいないので、知りたい方は福岡市のホームページを見てください。
そこには『文字』で燃えるゴミのリストが掲載されています。

ただ「燃えるゴミ」と言っただけでは、具体的に何のことかわかりません。
文書にすることによって、曖昧なものを明確に形にして、皆で共有することができます。


トラブルを共有するための文書

過去に大きな事故があり、再発防止のためにルールや手順書が整えられるというケースはよくあります。
しかし、年月が経つうちにそのような事故は風化し、何のためにその手順書があるのか分からなくなることがあります。
すると、手順書が軽視され、ムダな文書だと思われることがあります。

確かに業務と関わりがない場合、無理に手順書として残す必要はありません。
しかし、そもそも何らかの理由があって手順書を作ったのなら、教育資料などとして活用する、といった方法もあります。

2015年版では、手順書という形での文書は求めていません。
その代わりに新しい証拠となる資料が求められます。
教育資料も立派な文書の一つと言えるでしょう。


スリム化する前に

これからISOを構築する場合、あるいはすでに取得しているが、2015年版への移行に際して『マニュアルをスリム化したい』という要望を受けることがあります。

その理由として、、
・分厚い文書は作成するのが大変である
・せっかく作っても、その後活用されない
・手順書が多すぎる
といった問題があるためです。

スリム化とは、「手順書の量を減らす」、あるいは「マニュアルの分量を減らす」という意味だと思っている方がおられるのではないでしょうか。
このため「不要」な文書をなくすことが、スリム化の目的だと思われることもあります。

しかし、そもそもなぜ「不要」なものが存在しているのか。
文書をスリム化したいのであれば、『何を共有したいのか』を考えてみてください。
それを考え、量を減らすためのスリム化ではなく、ISOをうまく活用するためのスリム化を行っていただきたいと思います。



    2015年版のISO 9001・14001の構築のコツなど、ISOについてのQ&Aはこちらへ

    2015年版改訂のポイントについて







ISOを構築するには?


ISOはどのように運用すれば効果的か―
その答えは、全てのISO規格の土台となっている『品質マネジメント8原則』にあります。

上記の内容は、8原則に基づいて書かれています。
8原則とは? 8原則はISOにどう組み込む?
それを解説し、豊富な事例とともにまとめた本ができました。

 マネジメントシステムの原理原則〜品質マネジメント8原則で経営力を高めよう
 著:三村聡(アイムス代表コンサルタント)著 発行:日科技連出版社