本ページでは、ISOコンサルタント三村聡がコンサルタントになるまでの道のりについて綴っています。

地域づくりからISOの世界へ

特化したい~独立へ

ここまで私の経歴を読んでこられた方は、「地域活性化からなぜISOコンサルへ?」と思われるかもしれません。また、私が農学部出身だと言うと、ますます「???」という顔をする人もいます。

まず、地域活性化からなぜISOへ転向したのか、ということについて書きたいと思います。「転向」という言葉はふさわしくありませんね。特化といったほうがいいかもしれません。地域活性化というと、グリーンツーリズムや農産物直売所もそうですし、祭りやイベント、工場誘致や施設・建物の建設など、際限なく広がっていきます。そして、その手法もさまざまです。

しかし、私の原点は「農業」および「環境」です。また、多岐にわたる地域活性化の手法のなかで、それらを結ぶものが必要だと思いました。

そのとき、リオデジャネイロで世界が一つになったあの瞬間が、脳裏に蘇りました。「マネジメントシステム」こそが地域や企業の活性化の鍵になると思い至ったのです。

そして、独立を決意しました。大学院修了から4年後、まだ29歳のときでした。 しかし、29歳といえば、幕末の功労者、高杉晋作が没した年齢。大きな物事に取り組むのに、決して若すぎる年齢とは言えません。

その時は実家の事情などから広島で活動していたのですが、福岡の持つ可能性と利便性をバネにして活躍したいと思い、学生時代とその後社会人として計4年間を過ごした福岡に拠点を移して独立することにしたのです。

とはいっても、29歳でいきなり独立して何もかも順風満帆に、というわけには行きません。仕事を紹介してくれた人を信じて仕事を進めていたら、急に話が変わった、ということもありましたし、情報の行きちがいからパートナーに迷惑をかけてしまったこともありました。銀行に行けば、「こんな仕事で儲かるの?」と冷たくあしらわれ、会社の経営者だというと、マンションの販売のため電話をかけてきた営業マンでさえ引いてしまうというのが現状です。

しかし、私の一貫した姿勢を気に入っていただける方からの温かい支援もあり、何とか事業を軌道に乗せることができました。

第一次産業の視点から

ISOコンサルタントには様々なタイプの人がいますが、『第一次産業』の視点でマネジメントシステムを捉えているのが、私の特徴だと思っています。第一次産業、つまり農林業の視点。といっても、私の学生時代の専門が『農学』だったと言うだけです。実家が農家だったわけでもないし、実際に農作業に携わったのは学生時代の実習の時間だけですので、野菜の作り方については農家の方々の足元にも及びません。

しかし第一次産業とは人間にとっての土台。その中で私が専門的に学んできた『農業』はすなわち『食』であり、それは人の生活に切っても切り離せないもの。ですから、すべてのマネジメントシステムを考える際に、『農』を基盤にしたいと思っているのです。

まず、『農業』というと、皆さんは何を思い浮かべられるでしょうか? 田んぼ、畑、野菜、養鶏や酪農といったところではないでしょうか。
しかし、都会に住んでいると、そんな風景は身近ではないため、『農業』はまるで、どこか別の国の無関係な出来事のように思われがちです。

しかし、マネジメントシステムの考え方は違います。農業とそれに関わるものはすべて同じ流れの中にあるのです。

●飼料や肥料を作る人・種を作る人

●育てる・刈り取る・出荷する人(農家)

●加工する人

●運ぶ人

●値段をつける人

●売る人

●買う・食べる人(消費者)

第1次産業

これを『フードチェーン』と言います。

消費者である私たちは、それ以前の段階とつながりがあり、農家は、もちろん消費者とつながっています。
最近、やっと『トレーサビリティ』や『表示ラベル』などにより、お互いの情報を知るシステムが出来上がりつつありますが、まだまだ未熟な段階です。

この『フードチェーン』が滞りなくつながって行くためにお手伝いをするのが、私の仕事です。『農家』という狭い範囲だけではなく、製造・加工業者、運送業者、販売業者、そして消費者まで含めたシステム作りを行っていくこと、それが私の役目だと思っています。

ここで、マネジメントシステム(ISO)の出番です。これだけの広大な範囲のシステム作りを行うためには、小手先のシステムでは到底太刀打ちできません。フードチェーンは前後の段階と密接なつながりを持っているからです。

上記の概略図にはありませんが、農産物が製造されて消費者の口に入るまでは、もっともっと複雑な経路をたどります。パック詰をする場合は、包装資材がなけば始まりませんし、包装する機械も必要です。製品に関わる従業員には、マスクや割烹着なども必需品ですし、きちんとした作業手順や衛生についての指導も必要で。清掃道具、害虫駆除、消毒なども、もちろんフードチェーンの大切な段階の一つです。

これは、他のすべての業界にも当てはまります。業務の全ての流れを「システム」で捉え、一箇所だけでなくその前後の作業にまで目を配ることで、仕事の流れをスムーズにし、良い結果を出すことが出来るからです。

私は農業食品分野だけでなく、さまざまな業界でマネジメントシステム構築の支援を行っていますが、常に農業専門家の視点をもち、『ある製品・サービスは、あらゆるところにつながっており、すべてのつながりを意識したマネジメントシステムを構築する』という姿勢を忘れないようにしています。