HACCPの認証制度の種類、法制化、JFSの仕組みと取り組み方について知っておこう
食の安全を、国際標準の衛生管理システムで守る
HACCPとは
HACCPとは、HACCP12手順および、12手順を実施するための基本的な衛生管理(前提条件プログラム/PRP ※PP?)を構築することで、食品危害を防ぐことを目指したシステムです。
「HACCP7原則12手順に基づくハザード分析手法を採用している」ことを第三者が証明することが、HACCP認証制度です。

国、地域によって食事情が異なるため、国際規格より国の規格が優先される※意味不明
HACCP12手順は、食品安全を確実にするためのしくみとして有効に働いてますが、あくまでガイドラインです。国際規格であるISO 22000やFSSC 22000(食品安全マネジメントシステム)のように、世界共通の基準や要求事項は作られていません。

食品安全の考え方は、各国の食習慣(魚を多く食べる など)や、地域に適した食材(肉、豆類、米等の生産に適している など)、地域の慣習(水処理が適切にできる など)などによって異なるため、HACCP12手順を世界共通の基準とすることはできません。
このため、HACCPでは各国の取り組みが優先されることとなっています。。
これが、各国の規格に置き換えることのできるISO規格(例 ISO 9001はJIS Q 9001など)とは異なるHACCPの特徴です。
日本のHACCPの種類
日本においては、複数のHACCP認証団体が存在し、HACCPをベースにした様々な食品安全規格が作られています。
このため組織がHACCP認証を取得する場合は、HACCPに取り組む目的、業界の傾向、取り引き先からの要求等によって、認証団体を選択することとなります。
以下、認証団体の例を紹介します。
- 国、地方自治体、都道府県のHACCP
- 農林水産省(第一次生産者向けのアグリHACCP)や厚生労働省が発行しているHACCP。国の法律に基づいたHACCPに取り組むことができるため、国内のみを対象とした事業を行っている組織が取り組むことが多い。
- 各都道府県や各自治体によるHACCPは、自組織が所属する自治体等のルールで定められた食品衛生認証制度を利用することができる。
- 業界団体のHACCP
- 惣菜協会など各種業界によるHACCP。各業界のガイドラインに基づいて衛生管理に取り組みたい組織が対象。
- ISO審査機関のHACCP
- ISO審査機関などによる独自の認証制度(JIQ QA(日本検査QA)のHACCP、日科技連のJS HACCPなど)。自治体や業界団体よりも第三者的な目線で審査を受けられる。
- JFSのHACCP
- 日本初の第三者機関団体によるHACCP認証。(詳細は本ページの下部へ)
- 海外のHACCP
- 対米HACCP、チャイナHACCPなど、海外の政府が認定を行っているHACCP制度(日本国内で取り組むことが可能)。日本のHACCPの認証制度は国際的には評価されないこともあるため、外国に輸出したい場合などに。
- ISO 22000
- HACCP12手順を組み込んだ国際標準規格。国内向け、海外向けと別々に認証を取得すると手間がかるため、海外への輸出等を視野に入れる場合に。
HACCPの法制化
HACCPの法制化へ
日本では、HACCPへの取組や認証取得については、各組織の任意とされていました。
しかし、2018年に「食品衛生法等の一部を改正する法律案」が公布され、HACCPに沿った衛生管理が制度化されることになりました。これによって、すべての食品等事業者は、一般衛生管理に加え、HACCPに沿った衛生管理の実施が求められるようになります。
HACCP法制化の理由
日本では、衛生管理の考え方等の普及により食中毒の発生件数は減少傾向にあります。しかしながら、一定の水準で高止まりしているのが現状です。
食中毒事故の発生理由として、手洗い等の従業員の衛生管理や食材の保管等、一般衛生管理の考え方が普及していないことが指摘されています。「惣菜店においてトングの交換頻度が不十分だった」「運送会社で冷凍品を常温で保管していた」といった事故も多発しているのも、このような基本的な衛生管理が実践されていないことが原因です。
高齢化が進む中で食中毒事故の増加も懸念されています。
また、食品の国際的な流通が広がり、中国で製造された食品で死亡者が出たのはアメリカ、ベトナムで製造された食品で死亡者が出たのはドイツ、といった事象は珍しくなくなりました。このため、各国の衛生基準が異なっていると流通が阻害されるという問題も発生しています。
サミット参加国でHACCP等が義務化されていない(義務ではなく自己申告制となっている)のは日本だけです。そのため、貿易交渉においてもスムーズな議論が行えない状況になっていました。
こうした事情を克服するため、また食の安全のため、国際標準をベースにした衛生管理システムを構築することは必須となっています。
JFSとは(JFS-A、JFS-B、JFS-Cの仕組みと取り組み方)
すべての食品事業者がHACCPシステムを導入するのが望ましいのですが、組織の規模や業種によっては、HACCPを確実に整えるのが難しいこともあります。
そこで認証規格の一つであるJFS(Japan Food Safety)では、自社の規模や目的に応じて取り組めるようになっています。
JFSでは管理レベルごとに3つのランクがあり、「HACCPに基づく衛生管理」もしくは、「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」で対処できるようになっています。

JFS-A
小規模の食品事業者にとって、いきなりHACCP認証に取り組むのはハードルが高いでしょう。そこで、HACCP12手順のうち、「手順1~5」の仕組みを整えることで、ハザード分析を行う前の準備を整えます。
JFS-B
一般の食品会社は、ISO 22000やFSSC 22000などの食品安全マネジメントシステムに取り組むことにより、HACCP12手順を組織のシステムに組み込みます。
JFS-C
国際的な取引がある食品企業は、GFSI承認基準に対応した取り組みを行うことが求められます。
HACCP・ISO支援センターは、アイムスと提携している監査機関です。