本ページでは、ISO 22000やFSSC 22000に取り組む際に作成する「フローダイアグラム」の作り方について解説しています。
業務分析を行う
ISO 22000に取り組むに当たり、まずは「現状」を把握し、「流れ」を整理するところから始めます(業務分析)
- どのような作業を行っているか
- その作業は誰から何を受け継いだものか(インプット)
- その作業は誰に何を渡すものか(アウトプット)
- それは、誰の指示にもとづいて行っているのか
- 一つ一つの作業でどんなハザード(食品危害)が発生する可能性があるか
業務分析を行う手順
- 普段行っている仕事の流れを箇条書き(フロー)で書き出します。模造紙などに大きく書き出すとわかりやすいでしょう。
- 次に、自社で使っているチェックリストなどを仕事の流れにそって並べます。
- そして、それぞれのチェックリストの管理基準を書き出します。これで工程フロー図(フローダイアグラム)ができあがります。
- 現状に基づき工程フローを作成したのち、「これで漏れがないか」「汚染される可能性があるのではないか」「管理基準が明確になっているか」などを確認します。
以下に記した例だと、「下処理」や「包装」などでは、現在チェックリストが存在していない状態です。
そのような場合、管理する必要がないかどうかを検討し、必要ならば新しいチェックリストなどを作成したり、各作業についてを誰の指示でどのように行うのかという手順をまとめていきます。
例)

ISO 22000で求めているフローダイアグラム
さて、ISO 22000において、フロー図(フローダイアグラム)に記載する内容として求められているのは以下のとおりです。
- 業務の全段階におけるプロセスの順序、その相互関係
- アウトソースしたプロセス、下請け業務についての情報
- 原材料、素材、中間製品についての情報
- 再生、再利用についての情報
- 最終製品、中間生成品、副製品、廃棄物の処理についての情報
つまり、単に製品の『つくり方』を書くだけでなく、その製品が原材料として工場に入荷され、製品として出荷されるまでに関わるあらゆる流れをフローダイアグラムとしてまとめることが要求されています。
作りっぱなしで、排出された原材料やゴミのことなど知らない…というのではなく、製造、加工の過程で付随して生じる活動についても、きちんと管理できるようにします。
フローダイアグラムの目的とは
フローダイアグラムでは、なぜこんなに詳細な情報を記載することになっているのでしょうか。
一般的な『工程フロー図』だと、たとえば監査が入ったり、顧客に提出したりと、外部に見せることがあります。あるいは、現場の指導に使うこともあります。つまり、『見せる』ための資料です。
一方、『フローダイアグラム』の最大の目的は、ハザード分析を実施するための内部資料として活用することです。このため、管理基準を具体的数字などで記載しておくことが求められます。たとえば、『室温で』などと記載しているケースがありますが、室温といっても、夏と冬では違います。この場合、『25℃±5℃』のように数値化しておかなくてはいけません。
さらに『フローダイアグラム』は、『実際に現場で作業したときに、ほんとうにハザードが発生しないか?』ということを考えたうえでつくります。
食品製造・加工工場では、ひとつの場所でひとつの製品しかつくらないということは稀です。A製品を製造したあと、同じ場所でB製品をつくる、ということが行われることが一般的です。すると、交差汚染の発生の可能性もでてきます。
単なる形式だけのフロー図ではなく、ハザードを防ぐためのフロー図が、フローダイアグラムです。
組織の詳細な情報を全部書いてしまえば、情報流出につながるのでは? という企業では、顧客や外部機関向けには、わかりやすく要点だけまとめた『工程フロー図』を、ハザード分析用には『フローダイアグラム』をと二種類作っています。
せっかく書類を作っても、それが単なるお飾りにしかなっていないために食品事故が起きてしまう…そんな事態を防ぐために、ISO 22000ではここまで求めているのです。