ISO 9001の考え方はすべてのISO規格につながります。ISO 9001の基本、考え方、規格要求事項の内容について知っておきましょう。

ISO 9001(品質マネジメントシステム/Quality Management System)は、「品質」という言葉から「高品質なものを製造する」というイメージが持たれたり、「品質管理」のことだと思われることもあります。実際、新聞等で「ISO 9001とは優れた製品やサービスなどを提供している企業や工場に与えられるもの」という文章を見かけることもあります。

しかし、品質を管理し、不備や故障のない製品を提供するのは、企業として当然のことです。「うちの製品は不良品ではありません」とわざわざ宣伝する必要はないはずです。

ISO 9001の目的は、単に「良い製品を作ること」だけではなく、よい製品(サービス)を作る(提供する)ためのシステムを管理することです。
「よい製品・サービス」とは、顧客の要求する製品、サービスのこと。
よい製品やサービスを提供することで、お客さんに満足してもらうこと(顧客満足)を目指します。

ISO 9001は、制定当初から「顧客満足を目的としたマネジメントシステム」だったわけではありません。
製品の品質管理は古くから実施されていましたが、かつては完成した製品の「サンプル検査」が主流でした。

しかし、1960年代に、最終検査でのサンプリングのみによるチェックより、製造作業のプロセスの過程で品質チェックを行うほうが確実な結果が得られるとして、プロセス管理の重要性が認識されるようになりました。
その流れから、1987年にISO 9000シリーズ(品質マネジメントシステム)が制定されます

2000年代に入ると、製造業における取組がメインだったISO 9001は、サービス業を含む全業種が取り組めるよう改訂され、品質管理からプロセス管理へという色合いも強くなっていきます。

ISO 9001以外にも目的に合わせて様々な規格が作られましたが、2015年、すべての規格の構成が統一化されました。それに伴い、刻々と変化する社会情勢や価値観など、組織を取り巻くさまざま状況に対応していくことなど、新たな概念も取り入れられています。

現在のISO 9001(2015年版)では、顧客に満足いただくために、「よい品質、サービスを提供する」「そのためのプロセスをしっかりと管理する」のはもちろんのこと、「もしもそれができない事態が生じたら(リスク)」といった可能性に供えることも求められています。
また、組織に所属する一人ひとりにとって、ISOシステムが意義あるものになるよう、様々な工夫が凝らされた要求事項となっています。

このような経緯を頭の片隅に入れて、ISO 9001に取り組んでいただけると、今後組織がどのような方向に進んでいけばよいのか、何を目指していくのかが明確になっていくのではないでしょうか。

図解:ISO9001の仕組み
ISO 9001の歴史

ISO 9001では、ISO 9001規格要求事項に沿ってPDCAサイクルを構築します。
ISO規格要求事項は、すべてのISOマネジメントシステムで共通の構成(全10章)となっています。
システム構築に関わるのは、4章~10章ですが、他のISO規格と共通(類似)の部分と、規格独自の内容が書かれている部分があります。
特に「8章 運用」は、製品、サービス提供におけるプロセスを具体的に実施するための方法を定めることが要求されており、ISO 9001独自の内容となっています。

以下では、PDCAの流れに沿ってISO 9001規格をざっくりと説明しています。
他のISO規格と共通(類似)の内容、および詳細な説明を行っている部分についてはリンクを貼っていますので、リンク先をご覧ください。

Plan

組織について整理する(4.1~4.4)

  • 組織の「こうありたいと思う形(あるべき姿)」を明確にし、組織を取り巻く様々な状況(外部・内部からの課題、利害関係者からのニーズや期待)をまとめます。
  • そのうえで、ISO 9001の適用範囲(組織のどの範囲で構築するか)を決めます。
  • プロセスアプローチについても取りまとめます。プロセスアプローチとは、よい製品、サービスを提供するために、製品・サービスの「結果」ではなく、提供されるまでの「プロセス(過程)」を重視することです。「プロセスが明確になっている」「プロセス通り業務が行われている」ことが「顧客満足」に繋がるというのがISO 9001の考え方です。

リーダーシップを明確にする(5.1~5.3)

  • ISOでは、トップマネジメント(経営層)が強くかかわり、説明責任を持つことが求められます。
    • トップマネジメントは、組織の目的である「顧客重視」について品質方針で表明します。
    • 組織図や業務分掌を整えて、各役割の責任や権限を明確にします。

計画を作る(6.1~6.3)

組織のあるべき姿を目指し、プロセスアプローチを整えても、未来永劫それが達成できることはありえません。組織が「予期しない状況」について「リスク」あるいは「機会」と捉え、どのような機会やリスクがあるか、予期しない状況が生じたとき組織はどのように対処すべきかについて計画していきます。

支援体制を整える(7.1~7.5)

  • プロセスを管理しリスクや機会に対応するために必要な支援体制を整えます。
    • 組織内の資源(人材、インフラストラクチャー、環境、監視測定機器、知識)、人々の力量や教育訓練体制、コミュニケーションの方法など
  • また、これらを組織内の人々が共有し、組織外(第三者)に対して明確に示すために、必要な事項について文書化します。

Do

運用するための計画や手順を整える(8.1~8.7)

  • 実際に組織の各部署や各担当でシステムを運用できるように、具体的な計画や手順を整えていきます。
  • 顧客とのコミュニケーション(受発注やクレーム対応、営業活動など)、顧客ニーズへの対応(設計・開発、サービス開発など)、アウトソース先の管理などを間違いなく行うための手順を作り、それぞれ誰がどのように行っていくのかを明確にします。
  • 提供する製品やサービスを手順に沿って準備し、出荷(サービス提供)するための手順や、トラブルがあった場合の処置法についても決めます。

Check

評価する(9.1~9.3)

  • 製品やサービスを提供する過程(プロセス)に問題がなかったかどうかを、指標を決めて評価できるようにします。
  • それらの結果をトップマネジメントに報告し、トップマネジメントは改善方向を指示して、プロセスを見直します。

Action

改善する(10.1~10.3)

  • 不適切な製品やサービス(不適合)が発生した場合に備え、その処置法と是正処置について決めておきます。
  • ミスやトラブルといった不適合に限らず、時代の流れや組織を取り巻く様々な状況の変化に合わせ、システムを絶えずアップデートしていく仕組みを作り、マネジメントシステムを最適化していきます。