不適合が発生した場合の修正、是正処置、予防処置の考え方について理解しておきましょう。

10.2 不適合と是正処置(抜粋)

苦情から生じたものを含め、不適合が発生した場合、組織は、次の事項を行わなければならない。
a)その不適合に対処し、該当する場合には、必ず、次の事項を行う。
b)その不適合が再発又は他のところで発生しないようにするため、その不適合の原因を除去するための処置をとる必要性を評価する。
c)必要な処置を実施する。
d) とった全ての是正処置の有効性をレビューする。
e) 必要な場合には、計画の策定段階で決定したリスク及び機会を更新する。
f)必要な場合には、品質マネジメントシステムの変更を行う。

不適合及び是正処置とは

「不適合等があれば改善する」というのは当たり前にすべきことです。
ISOにおける改善(不適合および是正処置)とは、決めた手順が実行できていないとき、手順を実行できるように書き直す、あるいは実行できなかった原因を追求して、実行できる体制に変えていくといった活動のことをいいます。

トラブルや不適合が生じた場合は、以下の3つのステップで改善を行います。

  • 修正
  • 是正処置
  • 予防処置

1.修正(不適合の処置:不適合発生から正常な状態に戻すまで)

既に発生(顕在化)した不適合の事実を除去します(対象の製品を隔離するなど)。
と同時に、不具合が発生した要因である機械やその他の問題点に対し、適切な処置を行って正常な状態に戻すまでが「修正」です

修正の方法

  • 手直し
    • 機械の調子が悪い場合、機械の調整等を行なって正常に動けるようにしたり、製品の不具合箇所を除去するなど、正常な状態に戻す。
  • 再格付け
    • Aという商品では使えないからBの部品にするなど、他用途に再格付けする。
  • 再加工
    • 当初の予定通りに利用できるように手を加える。
  • 廃棄
    • 手を加えても利用できない場合は廃棄する。(スクラップ廃棄など)

2.是正処置(不適合の処置後、再発防止を行うまで)

機械の停滞など不適合の事実が発生(顕在化)している場合、不適合への処置(修正)を実施したあと、不適合の原因を追究して、それを取り除くことで再発させないための処置をとることが是正処置です。

再発防止の必要性を評価しよう

不適合の処置は必須ですが、是正処置は必ずしも必要とは限りません。再発の可能性が低いのに無理に是正処置を実施しても、過剰な処置になってしまう可能性があります。
ここで大切なのは、再発の可能性を評価することです。

そのためには、原因分析が必要です。なぜ、そのようなトラブルがおきたのか、原因を追究し、問題点を見つけられるようにします。なぜなら、不適合が起きた要因が残っている限り、同じことが繰り返し発生する可能性があるからです
原因を見極め、再発する可能性があるものなのか、それとも今回限りのものなのかを判断します

一般的に再発防止と言われることが多いですが、是正処置といいつつ不適合の処置となっているケースもよく見られます。例えば、「機械を正常な状態に戻し、製品を処置をしたことをもって是正処置とする」などです。
不適合の処置は必ず行いますが、処置が終わった後、なぜトラブルが起きたのか、なぜ不具合が起きたのかという原因分析まで行うようにしましょう

再発性を考慮して処置を考えてみよう

原因分析を行うことは、実質的に再発防止対策を考えることにもつながります。原因分析を行った結果…

  • 明らかに既存の設備や手順に不備がある場合、それらを取り除くことで再発を抑制することができます。
  • 非常にレアケースで再発性が低い場合は、教育や注意喚起をもって処置を終了することもあり得ます。

原因に応じて適切な処置を行おう

不適合の原因を取り除き、再発防止を行うことがベストですが、実際には、なかなか難しい場合もあります。例えば、原料由来である場合、発生すること自体は防げない場合などは、不適合の状態が発生することはやむ得ないとして、検知の度合いを高め、流出防止に努めることもあります。

再発防止の処置として「結果の抑制」「原因の除去」「検知の向上」といった取り組みを組合せ、不適合製品の流出を防ぎ、顧客のもとに不完全なものを届けないように適切にコントロールできるようにします。

修正及び是正処置の内容は記録に残そう

不適合が発生したら、まずは不適合の処置を行い記録に残します(簡単な一覧表や写真でも構いません)。これは必須です。

そのうえで、再発防止の必要性を検討したうえで是正処置を実施する場合については、その処置結果を記録に残します。

不適合が発生した場合に是正処置の記録まで残すことを必須にしているケースがあります。
すると、現場のスタッフに負荷がかかり、不適合なのに不適合の記録を残さないことも
不適合が発生してもすぐに処置できたものは、不適合としてとりあげず、ごまかせないものだけを不適合としてとりあげ、是正処置報告書を残すように。そのため、日々のトラブル(ヒヤリハット的な小さな問題)が報告されなくなり、そのことから発生する大きな問題が隠れてしまう…ということになりかねません。

不適合の処置(修正)の記録はしっかり残し、問題の見える化をしていくようにしましょう

3.予防処置(潜在的な不適合を防ぐ)

発生した不適合に対して処置を行うことは、広い意味では是正処置となりますが、発生していない潜在的な不適合に対しては、予防処置(未然防止)を行います
予防処置という言葉は要求事項には存在しませんが、「9章 分析および評価」「10章 改善活動」が実質的な予防処置的な取り組みとなります。

第9章において、様々な分析およびパフォーマンス評価を行っても、思ったよりもうまくいかない、なかなか提案件数が増えない、不具合が減らない、また次第に悪い状況になる…といったことがあります。
その段階では不具合は顕在化していなくても、放っておくと不適合につながる可能性がある場合は、発生する要因となる原因を取り除く必要があります。データ分析などの評価を通じて、今後予測される不具合に対して積極的に対策を考えます。

ISOのマネジメントシステムに取り組んでも、リスクやトラブルはゼロにはなることはありませんが、未然に防げるものはあるはずです。起こりうるトラブルを最小限に抑え、不要なミストラブルを制限していきましょう。