ISO 14001の計画を立てるための、リスクと機会、環境側面と環境影響の特定の仕方、順守義務の考え方について解説します。

ISO 14001におけるリスクとは?(要求事項 6.1.1)

ISO 14001のシステムを構築するにあたって、リスクを考慮することがベースとなっています。

ISO 14001のリスクとは?

ISO 14001はそもそも、環境に悪影響を与えるもの(環境影響)を削減するということを目指しており、環境影響そのものがリスクです。環境に悪影響を与える事態が発生しないよう、何らかの対策(環境計画)を作り、実施します。

ところが、その計画どおりに行われない事態(不確かなこと)が生じたら…という「もしも」についても対策することも、ISO 14001では要求されています。これがISO 14001の「リスク及び機会」です。

リスクが2つ存在することから、混乱してしまうこともありますが、このように違いを理解しておきましょう。

リスクと機会について理解しておこう

リスク及び機会は、どちらも不確かなことですが、それには「好ましくない不確かなこと」「好ましい不確かなこと」の二つの側面があります。

  • 「好ましくない不確かなこと」とはリスク(脅威)です
    • 有害もしくはマイナスの影響を与えるもの、脅威をもたらすもの、意図した成果を達成する「妨げ」「阻害要因」となるものなど。
  • 「好ましい不確かなこと」とは機会です
    • 有益もしくはプラスの影響を与える可能性のあるもの、ある目的に対して到達できるきっかけや時期、意図した成果を達成する「助け」「チャンス」となるものなど。

ISO 14001では、これらのリスク及び機会への対策を明確にします。
ISO 14001の「リスクと機会」は、不確かなことによって環境に何らかの影響を与える場合という環境の視点のみで決定します。

リスク回避を目指すだけがリスク対策ではありません。何らかの機会を追求するためにリスクを受容する、リスク源の除去またはリスクが発生した結果を緩和する、リスクを共有するといったことも含めて取り組みを行います。

環境側面と影響を明確にしよう(要求事項 6.1.2)

環境に悪影響を与えるもの(環境影響)については、主に要求事項6章で対策(計画:Plan)を立て、8章でその計画を運用(Do、及びAction、Check)していきます。

環境側面と環境影響を明確にする

まずは、顕在的(組織が現在環境に与えている)および潜在的(将来与えるかもしれない)環境影響と、その環境影響の元になっている組織の活動(環境側面)を明確にします。
環境影響は近隣地域のみならず、その地方から地球規模にまで及びます。組織の活動を行ったり、製品やサービスを提供する上で排出される好ましくないもの(廃棄物、環境に害を与える物質など)、周辺地域に何らかの変化を与えうるものを、有害か有益かに関わらず、すべてピックアップしましょう。

環境側面環境影響
廃棄物が出る処理するために環境に負荷がかかる
商品を流通させる周囲に交通渋滞を引き起こす
水を使用する地域の節水に影響をあたえる

環境側面をピックアップする際に考慮すべきポイント

  • 間接的に管理すべき環境影響
    • 組織自身が直接管理できる環境側面についてはもちろん、協力会社や取引会社などが間接的に管理する環境影響を明確にする。
  • ライフサイクルの視点
    • 環境影響がライフサイクル(原材料の取得から製品の廃棄までの一連の流れ)内の他の部分に移行しないよう、ライフサイクルの視点で環境側面を抽出する。

著しい環境側面を特定する

ピックアップした環境影響の中から、何らかの評価基準によって、環境に特に悪影響を与えているものを「著しい環境側面」として特定します。
基準は、環境側面(例:種類、規模、頻度)に関連することもあれば、環境影響(例:規模、深刻度、継続時間、露出)に関連することもあります。

基準の決め方(例)

  • 点数評価による基準
    • 環境影響の大きさや発生の可能性について、何点以上を「著しい環境影響」とするという評価方法。点数評価を行う場合は、点数だけを重視せず、それ以外の何らかの基準(法的要求事項、利害関係者の関心事、組織の課題を考慮した基準 など)を設けるようにしよう。
  • 法的要求事項による基準
    • 有害化学物質を取り扱う会社などで、全てが著しい環境側面となることもある。この場合は、評価せずに著しい環境側面としてもよい。
  • 組織の状況による基準
    • 気候や地域の特徴により環境影響は異なる。全社で同じ基準で評価する必要はない。

著しい環境側面については、環境目標として削減するものと、これ以上悪化させないように日常的な業務の中で管理し現状維持するものに分けて対策を講じます。

環境影響と環境側面

順守義務について対処する(6.1.3)

法令順守(コンプライアンス違反)のリスクと機会を知っておこう

環境活動を行う上で、またコンプライアンスという面でも、法に基づいた活動を行うのは必須です。
例えば環境法を逸脱した場合は、周囲に悪影響を与えるというリスクになったり、組織の評判を落としたり大きな問題となるなどのリスクが生じる可能性があります。
自社に適用可能な法律を特定し、組織が順守しなければならない法的要求事項については確実に順守できるようにしましょうる。

  • 特に環境側面に関する法律環境関連の法律(リサイクル法、廃棄物処理法 など)についてはすべてピックアップし、特定した順守義務のうち、環境側面に適用されるものを決定します。
  • 順守義務には法的要求事項に加え、組織が順守すべき、あるいは順守することを選んだ要求事項も含まれます。
  • ISO 14001における主な法令違反は環境の法規制ですが、直接的な環境以外にも、各種環境問題や生活そのものを間接的な環境と捉えると、様々な法律が適用されます。