食品安全を確実にするための具体的な対策を立てます。
管理すべきハザード、管理の程度、管理手段などについて、手順を追って決定していきましょう。
8.5.2 ハザード分析
食品安全ハザードをピックアップしよう
ハザード分析の準備が完了したら、具体的なハザード分析の手順を整えていきます。
まずは、どのような食品安全危害(ハザード)が、どこ(工程)で、どのようにして発生するのかを明確にします。
- 危害の発生源だと思われるもの(食品安全ハザード)は、すべてピックアップします。
- フローダイアグラムや配置図等を活用し、食品安全ハザードが存在し、持ち込まれ、増加、存続する可能性のあるステップ(原材料の搬入、製造工程、原料の受取、加工、流通、配送、最終的な消費者に至るまでの工程)についても特定します。
食品安全ハザードの種類
- 微生物(生物)的危害:細菌、ウィルス、寄生虫、カビなど
- 化学的危害:農薬、化学薬品の混入、生物の天然の毒など
- 物理的危害:金属、意思、ガラスなど
ハザードは、過去に発生していないから今後も発生しないと考えるのではなく、これからは起きるかもしれないという視点でピックアップしてみましょう。
- ピックアップのポイント
- 業務の中で実際に起きたことがあるもの
- サプライチェーンの中で発生したことがあるもの
- 他社で発生したことがあるもの
- 食中毒事故事例
食品安全ハザードを評価しよう
各食品安全ハザードについて、ハザードが発生する可能性(原因)と、製品が健康に与える影響(結果の重篤性)を明確にし、管理の優先順位を評価します。
管理レベルを2つに分類しよう
ピックアップした危害を全て管理することは不可能なので、実際に事故が発生したときの影響の大きさや起こりやすさなどを考えながら、それぞれ管理の方法を決めます。
ハザードは以下のいずれかの方法で管理します。
- 日常的な管理で危害が防げるものは…
- PRP(前提条件プログラム)に基づく一般的な衛生管理
- 著しいハザードが発生する可能性のあるものは…
- ハザード管理プランでしっかりとした管理
評価した結果に基づいて、管理すべき工程ごとに管理手段を決定します。
管理レベルを分類するときに考慮すべきこと
- 食品安全危害(ハザード)が現実に発生する可能は?
- 食品安全危害(ハザード)が起きた場合の影響の大きさは?(結果の重篤性)
- モニタリングは実施できるか?
- 危害が発生したときの処置はしやすいか?
ハザード管理プラン
食品事故が発生する要因(異物の混入、微生物の増殖など)は発生することが予測できますが、その対策が不十分だったときに事故が発生します。
裏を返せば、適切な手段を取れば食品事故は防げます。これがハザード危害分析の考え方です。
著しい危害が発生することが想定されるポイントであるCCP(重要管理点)については、重点的に管理が必要な工程として「HACCPプラン」に基づいた管理を行います。
管理は必要だが、逸脱時の即時の対応等まで行う必要がない場合は、OPRP(オペレーションPRP)で管理します。
PRP(前提条件プログラム)
社内の基本的な衛生管理(手洗い、個人の衛生管理など)で、食の安全を守れる場合は、PRP(前提条件プログラム)での管理を行います。
ハザードの中には、例え危害が発生しても、その後の工程の中で消滅するものもあります。
例えば、A工程で食中毒菌が増殖する可能性があっても、その後のB工程で「85度で5分加熱」すればその細菌が消滅する場合、B工程を「重要管理点」とすれば良いため、A工程をハザード管理プランで管理する必要はありません。
8.5.3 管理手段及び管理手段の組合せの妥当性確認
既存の管理方法のままで十分に食品安全ハザードが予防、除去され、許容レベルにまで低減されるかの見直し(判断)を行います。
管理手段は妥当か確認しよう
- 許容限界及び処置基準は妥当?
- ハザード管理プランは妥当?
- ハザード管理プランとその他の組合せは妥当?
食品安全ハザードを管理できない状況であることが判明したら
- 管理手段及びその組合せを修正し、再評価
- 管理手段、原材料、最終製品の特性、流通方法、意図した用途の変更 など
8.5.4 ハザード管理プラン
ハザードの許容水準を決定しよう
食品危害を確実に抑えるため、「安全な製品」と「安全ではない可能性のある製品」の境界(許容水準)を定め、速やかに処置の必要性が判断できるようにします。
許容水準は最終製品がどのように食されるか(意図した用途)を考慮して決定します。
CCPでチェックすべきものは「許容限界」
CCPでは、逸脱等が見つかった場合に確実に危害を抑えるために、必ず管理すべき重要な部分に対し「許容限界(CL)」を設定します。
科学的根拠に基づき、速やかに判断できるようにするため、モニタリング(測定)可能であることが必須です。
例)金属異物を確実に排除するポイント、確実に殺菌するポイント など
- 許容限界の指標
- 化学的測定値:水分活性、pHなど
- 物理的測定値:温度、時間、圧力など
- 官能的指標 :色調、光沢はどうか
- 即時に結果を判断できるようにするため、結果がわかるまで時間がかかる微生物学的な指標は原則として使用されない。
OPRPでチェックすべきものは処置基準
OPRPで管理するポイントは、測定可能または観察可能であることが条件です。ただし、モニタリングは必須ではなく、目視検査などの官能的指標を採用することができます。
また、手順化または計画書を作成することが求められます。(細菌検査要領などを手順化する など)
モニタリングシステムを確立しよう
CCPの許容限界は、範囲内に収まっているのかを調べるため、数値を記録してチェック(モニタリング)します。
モニタリングシステムを決めるために
- 適切な時間枠内で結果を出すことができるよう、モニタリングの対象、場所(測定箇所やサンプリング場所)、方法(モニタリング機器)、頻度、責任等を整理する。
- 官能検査(目視検査等)もOK。ただし、指示書や規格、教育・訓練によって妥当性が裏付けられるものであること。
- 問題が生じた際に処置が行えるよう、評価後の是正を行う権限を持った者を評価者とする。(評価者はモニタリング担当者と同一人物にしてはならない)
許容限界(処置基準)を超えた場合を想定しよう
許容限界を越えてしまったものは、市場に流さないように処理を行うのが大原則ですが、これらを満たさない製品が作られてしまう可能性も想定しておく必要があります。
許容限界を逸脱した場合、製品や工程の処置は速やかに行う必要があります。迅速に不適合製品を隔離できるように修正及び是正処置手順を定めます。
- 許容限界を逸脱した製品は…
- 「安全でない可能性がある」ものとして、リリースされないように管理(隔離)する
- 指標を許容限界内または処置基準内に戻す
- 逸脱した原因を調べ、原因を排除する
- 工程をもとの状態に修復する
生産活動が落ち着いた段階で、逸脱の再発防止策を講じます。
ただし、再発防止は毎回必ず実施する必要はありません。発生した逸脱の状況を考慮して、再発防止対策の必要性を評価します。