内部監査の進め方、準備、監査の基準・目的・範囲の決め方、不適合への対応について知っておきましょう。
内部監査の実施するための5つのステップ
内部監査は、以下の手順で行います。
- 監査の開始
- 現場監査活動の準備
- 現場監査活動
- 監査に関する報告
- 監査のフォローアップ
STEP 1 監査の開始
内部監査の開催に先駆けて、監査の基準、監査の目的、監査の範囲を明確にし、監査チームを決めるなど監査の体制を整えていきます。
監査基準を決める
監査基準とは、監査の際、合否の判断基準となる書類などのことです。
- 第三者監査や二者監査等の外部の審査の監査基準:規格の要求事項や顧客の要求事項
- 内部監査の監査基準:一般的に自組織のマニュアルや手順書
監査の目的を決める
監査を行う際は、何を重点的にチェックするのか、何のために監査するのかという目的を決めます。
内部監査の監査基準は「自組織のマニュアルや手順書」であるため、まずは手順書通りに実行しているかを監査します(適合性監査)。
その上で、自組織のマニュアルや手順書を実施した結果、効果が出ているかについても監査を行います(有効性監査)。
監査の目的にあった監査を行おう
- 外部の定期審査を受ける前の予行演習(模擬監査)、という目的の場合…
- 規格の要求事項に基づいて質問し、それに対してどこのマニュアルで回答できるか、という練習として監査を行ってみよう。それによって規格やマニュアルの理解が進むことも期待できる。
- 自組織の定めたルールが本当に効果があるのかをチェックする、という目的の場合…
- 規格の要求事項通りにマニュアルが作成されているかをチェックするより、現場の日報、トラブル報告、是正処置の内容を確認してみよう。
監査の範囲を決める
実施する監査の基準や目的が明確になれば、必然的に監査を実施すべき範囲(部門、エリア)が決まります。
監査の基準、目的から決まる監査の範囲
- 定期審査を受ける前の予行演習であれば…
- 定期審査を受ける部門を対象にする。
- 二者監査等で外部の監査を受ける前であれば…
- 監査慣れをするため、顧客用の製品のラインなどを集中して監査を行う。
- 有効性に焦点を置いて内部監査を行う場合は…
- 前回の監査で多くの不適合が出たところに対し、どれだけ改善ができてるかを確認する。または不適合は発生していなくても、潜在的なリスクやトラブルが起きる可能性が高いところを中心に監査する。
- 外部審査を受ける前の予行演習(模擬監査)として実施する場合は…
- 規格要求事項に基づいてマニュアルの妥当性を確認し、その通りに運用しているかという適合性に焦点を当て、審査の対象となっている範囲を監査の対象にする。
STEP 2 現場監査活動の準備
内部監査を行う前に、内部監査員が組織のマニュアルをチェックし、限られた監査時間にどのようなことをチェックすべきかについて準備します。
一つの方法として「チェックリスト」を準備し、質問項目をリストにすることがあります。
ただし、必ずしもリストを作る必要があるわけではありません。例えば、マニュアルをコピーして、アンダーラインやカラーペンで質問したいポイントを記入するだけでも構いません。
実際の監査現場では、用意したリストやアンダーラインの箇所を読み上げて質問するのではなく、現場では「何をしているのか」「どのような方法でしているのか」「どんな記録が残っているのか」を聞き、それがルールに「適合しているかいないか」を確認していきます。
STEP 3 現場監査活動
監査の当日、監査で質問する項目を中心に、現場の作業責任者等に質問を行い、監査結果が適合か不適合かを評価します。
STEP 4 監査に関する報告
評価した結果を報告書にまとめ、是正処置を依頼します。
STEP 5 監査のフォローアップ
是正した内容が適切かどうかをフォローします。
内部監査を実施するために
他部署が監査するメリットを知っておこう
内部監査は他部署により行われるのが基本です(開発部が営業部を監査する、店舗運営部門が本社を監査する、など)
しかし、被監査側からは「現場のことを理解していない監査できるはずがない」という反発が見られることもあります。もちろん、他部署の監査者は現場の状況については詳しくありません。
しかし、「ルール通りできているかどうか」については判断できます。
自部門で監査すると、現場の苦労がわかっているため、多少のルール違反は仕方ないと見逃してしまうことがあります。
しかし、不適合は不適合として指摘しないと改善されません。どんな事情があろうと、ルールに反していることに対しては、毅然とした態度で「不適合です」と伝えなくてはなりません。
自部署の常識は他部署の非常識です。「現場のことを知らない人間が監査する」のは、内部監査の大きな利点です。
分かっていはいるが、見逃しがちなことを「No!」とはっきり言うのが内部監査です。
不適合を指摘された被監査者は、まずはダメなルールはダメだと認めましょう。
監査者と被監査者は常に同等
監査員と被監査者が、まるで敵と味方のような立場に立ち、会社内がぎくしゃくしてしまうといったケースも稀に見られますが、それは内部監査に対する認識が間違っているためです。また、監査者が被監査者よりも立場が上だと認識する必要もありません。
「監査」や「不適合」という言葉にマイナスイメージがあるのであれば、言葉を変えて「発見」にしてみましょう。
内部監査では、不適合(という名の発見)を出し、共有していくことが大切です。何も発見できないのは、そもそも監査のやり方がおかしいといえます。
不適合を出すことを恐れないようにしよう
監査員に一番勇気を持っていただきたいことは、不適合を出すことを恐れないことです。
不適合を発見できるということは、組織内でよい雰囲気が作られ、切磋琢磨できているということです。不適合が出ないのは、決して良い状態ではありません。
ISOを導入したばかりの内部監査では、
「そもそもルールを守っていない!」「記録がない!」
といった指摘も発生し、「有効性の監査」にまで手が回らないこともあります。
もしくは、特に何らかの不適合もなく、業務も滞りなく行われている場合もあります。しかし、その場合も「他にもっと良い方法はないか」「こんな方法がよいのでは」と内部監査員が問いかけたりアドバイスをすることで、さらによりよく業務が行われるようになることもあります。
このような気づきや指導は、外部の監査では決して行うことができない内部監査だけの強みです。
不適合が出た場合の改善方法を知っておこう
手間を増やすのではなく削減する改善策を
内部監査で発見された不適合に対し、是正や再発防止的な改善策を考える際、むやみに実施項目を増やしていないでしょうか。ダブルチェックを行う、教育を実施する、新しくチェックシートや点検シートと作ってチェック項目を増やすといった対策をとると、効果が限定されてしまうこともあります。
工数や手間の削減に繋がるような改善策を検討してみましょう。
改善は部門、章(9.2)を超えて行おう
不適合は何らかの問題が見つかった部門に対して出すため、その部門に対して改善を求めることになりますが、仕事の仕方や手順を見直す際、1つの部門では取り組みにくいことがあります。仕事は複数人、あるいは複数の部署(プロセス)で繋がっているからです。
内部監査を、監査を受けた部門の中で無理やり完結させようすると、できる範囲として教育の実施、チェックシートの改定、手順書の作成といった目先の改善になってしまいます。
そのような改善で十分効果が出る場合にはよいですが、そうではない場合には、自部門を超えた改善策を考えてみましょう。
部門最適ではなく、全体最適を目指して取り組んでいくというのが、不適合是正の考え方です。
内部監査の不適合に対する改善が、9.2で完結できないことがあります。その場合は、「第10章 改善」で不適合および是正を行っていきましょう。
9章のパフォーマンス評価(自己評価)、内部監査(他社評価)、マネジメントレビュー(上司評価)で改善の機会が見つかった場合は、10章も含め、会社全体で連携しながら取り組んでいきましょう。
内部監査を効果的に行うために
- 内部監査とは 外部審査と内部監査の違い、内部監査の手順
- ISO内部監査の準備と進め方 適合性と有効性で監査する方法、不適合の考え方
- 内部監査員養成講座
- 内部監査支援 コンサルタントが内部監査に「立会」または「代行」します