ISO 9001を具体的に運用するために。ISO 9001の8章「運用」の流れと顧客とのコミュニケーションについて理解しておきましょう。
8章「運用の流れを知っておこう
8章は各規格のテーマによって異なる
ISO規格要求事項の8章「運用」は、PDCAのDO(運用)の部分です。
8章は、品質、環境、情報セキュリティ、労働安全衛生、食品安全など、各規格のテーマによって取り組むべき内容が異なります。
ここでは、ISO 9001の8章について解説します。
自分の仕事がうまくいったときがプロセスの基準
8章では、8.2以降に具体的な項目が書かれているため、「8.1運用の計画及び管理」をおろそかにしてしまうケースも見られますが、まずは8.1の内容を理解しておくことで、ISOを運用する上での目的もクリアになり、より目標達成をしやすくなります。
8.1では、プロセスの基準を明確にすることが要求されています。
プロセスの基準とは、簡単に言うと「自分の仕事がうまくいった時」を指標(基準)としたものです。
- プロセスの基準の例
- クレームやトラブルがないとき、またはトラブルがあっても適切に改善できたとき
- 営業ノルマを達成したとき
- 顧客の評価点数が上位だったとき
- 予定の生産個数が時間通りできたとき
- 機械が故障なく稼動した、またはチョコ停がほとんどなかったとき
このように顧客評価、納期や売上、利益率、生産ロット、ロスタイムなどが基準となります。
部門や部署、事業の内容によって異なりますが、どんな指標でもよいので、「自分たちの仕事がうまくいったとき」をどの指標で捉えているかを明確にしてみましょう。
自社内で手配せず外部から採用した場合には、外部に委託したアウトソース管理のための基準を決めます。
それらの基準が遵守されているかどうかを日常的にチェックし、遵守できていないことが判明した場合、又は遵守できない状況が想定される場合は、何らかの対応策をとることが、8章の流れです。
8.2 市場ニーズの明確化、顧客との交流
顧客要求事項に応えるための3つのステップを知ろう
顧客が望むものを実現することは、業務を行う上で不可欠です。そのために、適切な顧客とのコミュニケーションをとることが求められます。
「8.2 市場ニーズの明確化、顧客との交流」では、顧客とのコミュニケーションについて要求しており、規格の流れは以下の通りとなります。
- コミュニケーション(顧客とやりとりする担当者を決める)
- 顧客の要求事項を明確にする
- レビューする
どこまでの情報があれば仕様を確定できるかは、会社や製品によって異なりますが、自社の条件に合わせて必要項目を整理します。
5つの手順で顧客とコミュニケーションしていこう
- 1.顧客に提供する製品・サービスを明確にする
- 顧客に提供する製品やサービスを明確にする(仕様書、企画書など、自社の製品やサービスをまとめたものを用意する)。
- 2.顧客に提供するための手順を決める
- 顧客とのコミュニケーションのための手順を決める。例えば見積の提出、引き合い、折衝、打合わせ、最終的なクロージング(受注)といった一連の取り組みをフローや手順として整理したり、問合わせに対して誰がどのように対応するかを明確にする。
- 3.顧客からの情報を適切に受ける方法を決める
- 苦情を含む、顧客からの要望を、誰がどのように受け付けるかを決める。
- 4.顧客の所有物の管理方法を決める
- 顧客が所有する物、材料などを取り扱う場合の管理の方法について決めておく。
- 5.緊急事態への対応を決める
- 自然災害等の緊急事態が発生した時にすべきことを決めておく。万が一のことが起きてから対応しても遅いので、誰が誰に対してどのように情報発信するのかを明確にする。
例外的な受注を取りこぼさないようにしよう
実際には、一般的な営業活動でのみ受注が行われるわけではありません。
- 配達のついでに、注文をとってきた。
- 新製品の打ち合わせ中に、注文を受けてきた。
- 社長が接待ゴルフ中に受注してきた。
このような営業活動外の受注についても見逃しがちなので、窓口(担当者)を決めておきます。
曖昧NG! 顧客の要求を満たすための条件を明確にしておこう
- できないことはしない
- トラブルやクレームは、顧客の望むものが曖昧なまま進めることで起きがち。受注する段階で、顧客の要望を満たすことができるかどうかを必ず熟考し、できないものは受けないようにする。
- 顧客の要求を満たすための条件を伝える
- 自社が顧客の要望を達成するために、最低限守ってほしい決まり(受注の期限や条件など)を顧客に伝え、その上で同意を得ておく。受注だけして納品の期限を伝えていないなど、暗黙の了解で進み、トラブルに発展するケースは多い。
- 顧客の要求を確定する
- 顧客の要望について、前と同じだろうと勝手に推測したり、曖昧なまま進めない。
- 変更に注意する
- 受注が確定した後、変更が発生することは多々ある。この時がもっともトラブルが生じやすいため、変更が生じた際は、関連する書類を変更するなど、手順を具体的に決めておこう。
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