本ページでは、ISO 50001(エネルギーマネジメントシステム)の基本、考え方について簡単に解説しています。
ISO 50001は省エネに特化した規格
東日本大震災をきっかけに、「エネルギー問題」が大きくクローズアップされるようになりました。今後の日本は、限られたエネルギーといかに向き合いながら生産活動を行っていくのか、というのがとても大きな課題です。
省エネルギーについては、ISOには環境マネジメントシステム(ISO 14001)があります。
ISO 14001は、省エネなどを目指す環境への意識が高い企業が取得する規格です。
環境といえば、つい「地球環境」という大きなテーマを考えがちですが、もともとISO 14001は、環境問題だけを考慮したものではありません。 品質マネジメントシステムのISO 9001は「顧客が望むもの」をしっかり作り上げるシステムですが、ISO 14001は「顧客が望まないもの」を管理するシステムだといえます。
顧客が望まないものとは、不良品や廃材などの『ムダなもの』。
ISO 14001が目指しているのは、紙、ゴミ、電気といった環境に関するムダだけでなく、ムダな作業、ムダな工程、ムダな経費といった、組織内のすべてのムダを見直し、ムダのないシステムを作ることです。
ISO 14001は、様々な視点から改善の機会を探ることを目指しているため、環境問題に対処するうえで優れた規格ですが、省エネのみに焦点を当てた規格ではありません。
そこで、より具体的でエネルギー改善に特化した規格として、ISO 50001が制定されました。
ISO 50001は管理の基準が明確になっている
ISO 50001では、エネルギーに特化した分、管理の基準が明確になっています。
以下の手順で管理を行います。
エネルギーの使用基準(ベースライン)を、過去の実績等を踏まえて決定する
↓
現状のエネルギー使用量を把握するための指標を決定する
↓
指標を管理することを通じて、ベースラインを超えていないかどうかをしっかり管理し、改善につなげる
具体的にパフォーマンスを追求していくという点において、ISO 14001とは大きく異なります。
また、中小企業の場合、エネルギーのみを考慮するなら、省エネ法などに関係する「省エネ診断」の方がわかりやすいかもしれません。
ただし、ISOには組織全体のシステムを見直すことによって、経営の向上につなげていく「システムの改善」という大きな特徴があります。
ISOの「システム改善」と、省エネ診断の「エネルギー改善」、この二つを合わせ持つのがISO 50001です。
エネルギー管理だけを考えたいのか、それとも組織のシステム全体を「ムダのないシステム」にしていきたいかによって、省エネ活動への取り組み方が違ってきます。