ISO 9001とISO 14001の違いを知って、規格をより理解しましょう。

ISO 9001とISO 14001の違いを知ろう

組織がISOを導入する目的が違う

ISO 9001を導入する目的は、組織によって様々です。
「社内のルールを整えたい」「手順書がぐちゃぐちゃなので整理したい」「社員教育をしっかり行いたい」など、組織が目指す姿(意図した結果)を目標として描き、その目標に向けてすべきことを、システムとして整えていきます。

一方、ISO 14001を導入する目的は一つ、「環境のため」のみです。
組織のさまざまな経営活動はすべて環境につながっている、と意識することが求められています。規格要求事項の4章から10章までの各項目について、すべて環境対策を軸としてシステムを作ります。

ISO規格が目指しているものの考え方が違う

組織が最も目指さなくてはいけないのは、顧客が望むもの(様々な製品やサービス)を提供することです。
顧客満足を追求していくために、製品・サービスを適切に管理するというのが、ISO 9001の原則となります。

しかし、組織が活動を行う中で、どうしても顧客が望まないものが発生してしまいます
例えば、製造の途中で排出される余った製品や廃材、各種ゴミなどの廃棄物、社内で使用する電気、ガス、水などのエネルギーなどです。
業務を行っている以上、これらを0にすることは不可能ですが、顧客が望まないものについては適切に管理する必要があります。これがISO 14001の原則です。

「望むものを提供する」と「望まないものを提供しない」、要するに、2つのシステムは結局は同じ目的を持っています。

では、2つのシステムの違いとは何か。
それは視点です。「品質面から見た場合」と「環境面から見た場合」という視点が違います

  • ISO 9001の視点
    • 経営面に配慮し、必要なものだけを仕入れ、ムダなく製品を作る
    • 廃棄物の処理にかかる費用や手間を減らす(コスト削減)
    • ムダのない作業工程(システム)で作業する
    • システムの効率化によって余裕が出来、顧客の求める製品を作り出す
  • ISO 14001の視点
    • 廃棄物を削減する
    • 労働時間の短縮により省エネを行う

ISO 14001に取り組むことで、「顧客が望むものを提供する」ための経営改善や顧客満足(ISO 9001の分野)にも取り組むことができます。
逆に、ISO 9001を構築することで、ISO 14001の視点も組み込むこともできます。

どのISOマネジメントシステムを導入するかは、自社が「何を自社の目的(方針)としたいか」によって決まります。

リスクと機会への対策が違う

ISO規格では、第6章でリスクと機会について準備しておくことを要求しています。万が一、自社で定めた「計画」どおりに行われない事態が生じたら─ということを想定して備えておくのが「リスク及び機会」です。


ISO 9001では、例えば 「インフルエンザで社員のほとんどが欠勤 」「震災等により設備が壊れた」といったことを想定します。

ISO 14001でも、上記のような想定をしても間違いではありません。ただ、「そのことによって環境に何らかの影響を与える場合」のみを考えます。

リスクと機会を決める

リスクの例「もしも、震災等によって設備が壊れたら…」

  • ISO 9001の視点
    • 製品が作れない → 供給停止になる
  • ISO 14001の視点
    • 工場排水が濾過できない → 川に垂れ流しになる

機会の例「もしも、ある製品がブームになり、製造が増加したら…」

  • ISO 9001の視点
    •  売上が上がる
  • ISO 14001の視点
    • 生産量が増えることで設備を長く使用するため、エネルギー効率が高まる(立上げ時にエネルギーを消費するので、稼働時間が長い方がよい)   
    • 材料を使い切ることができるので、ロスが少なくなる   
    • 売上金の一部で緑化を行う、といったCSR的な活動も