ISO 14001の目的目標はどのように考えるか


第1段階 『日常管理』で環境活動を行う

ISO 14001では、環境保護のために何らかの活動を行なうことが求められています。
環境のためにこういうことをしよう!と決めたことを、『環境目標』として設定します。

●できるところからはじめる

環境目標を設定する際、まだ環境活動を始めたばかりで社員に環境意識が浸透していない会社では、『紙、ゴミ、電気』の節約といった基本的な環境活動からはじめてみてもよいでしょう。
 例)「コピー用紙をムダにしない」「電気はつけっぱなしにしない」「室温の管理」等

●各個人が環境への意識を「自覚」する

しかし上記のようなルールを決めるだけでは、それを守りさえすればよいという意識だけで止まり、実際の環境活動にはつながらないことがあります。
形だけの省エネは結果につながらないA社では、全館のエアコンの温度を28度に設定し、「クールビズ」を奨励していた。厚着して室内の温度を下げるのではなく、薄着して温度設定を少しでも上げて省エネにつなげるためである。
ところが、パソコンなどの電化製品の熱や人の体温などがこもり、実際の室温は30度をはるかに超えていた。あまりに暑いので、各自「マイ扇風機」を用意し、結果として省エネにはつながらなかった…。
「省エネ」を目的とした温度設定やクールビズのはずが、結果的に電力を多く使ってしまうなど、いつの間にか本末転倒になってしまうことは多々あります。
何のためにそのルールがあるのかという「目的」への理解が浸透しておらず、その目的を達成するためにはどうすれば一番効果があるのかを、各個人が考え、実行していないためです。
「電気を消しましょう」「裏紙を使いましょう」と言うだけでなく、社員一人ひとりが「何のためにその活動を行なうのか」を理解し、「自分がすべきこと」として意識できるよう『自覚教育』を行なうことが必要です。

環境活動は、組織に押し付けられて行なうのではなく、本来は一人ひとりが地球環境のために「私ができること」として考えるべきことです。
まずは、これらの基本的な環境活動を『日常管理』として定着できるようにします。



第2段階 プロジェクトとしての環境目標

●プロジェクト的な環境目標

ISOに取り組んで2、3年経ったら、第2段階として、組織として意味のある目標を定める方向に持っていきましょう。
本来、組織が定める環境目標は、単なる全社的な「スローガン」として日常的な環境活動を行うことではなく『プロジェクト』的な性格を持ったものであるべきです。。
「数値を減らす」ことを目標にしない

B社では、環境目標を決める際、「年間計画表」を作っていた。例えば、節電のため「昼休憩は消灯する」という目標を決めたら、「いつからいつまで誰が責任を持って実行する」といったことを矢印で書き込んでいる。毎年このような目標を決め、電気の使用量を、最初の年は10→9にし、翌年は9→8にする、などと設定している。
しかし、いつしか「減らすこと」が目標となり、予定通り減らせないと「減らせる数字」を設定し、何とか「目標をクリアする」ことを目指すようになっていた。

環境に優しい企業になるための環境目標のはずが、いつの間にか目標を達成するための環境目標になってしまうケースもよく見られます。

実は、電気の使用量を減らすのは、難しいことではありません。
機械を稼動させることで電気の使用量が増えるなら…稼動させなければよいのです。
つまり、働かなければ電気も減らない。簡単でしょう? 
…というわけにはいきません。そんなことをすれば、会社の経営状態が危なくなってしまいます。「環境のため」と言いながら会社が滅びてしまったら意味がありません。

●プロジェクトを『SMART』で考える

環境目標を設定する際、『SMART』というキーワードを一つの目安として考えてみましょう。

【SMART・・・
・Specific(その部門・部署特有のテーマである)
・Measurable(達成できたかどうかが判定可能である)
・Achievable(到達できる)
・Realistic(現実的に出来る)
・Timely(一定の期間内で達成できるもの)

※『SMART』の単語については諸説ありますが、ここでは上記の用語を使用します。

たとえば、全社として今年の環境目標は電気の使用量の削減率を「8%→7%」にするといった目標を決めるとします。
「電力の削減」は、電気の使用量などで「一定期間の結果を判定」でき、その目標に「一定の期間内」で「到達」することも可能な「現実的な目標」だともいえます。

しかし、「各部門・部署に特有のテーマ」でしょうか?
現代では、ほぼすべての業務、職種において何らかの電力を使用しているため、各所で何らかの電力削減を目指すこともできるため、「特有のテーマではない」とは言い切れませんが、「すべての部門」が「同じ目標」を立てることは、不自然ではないでしょうか。

たとえは、 日中ほとんど人がいない「営業部」は、電気を消すことで「ムダをなくす」ことができますが、「事務部門」には電気が必要です。さらに「製造部門」になると、いくら省エネが大事だといっても、機械を動かすためには電気を使わないわけにはいきません。

全社でISO 14001に取り組んだとしても、全ての部署が判で押したように同じ目標に向かって頑張るのは、現実問題として不可能なはずです。
全社上げて「電気は消しましょう」という目標を定めるのではなく、『部署ごと』によりプラスになる環境目標を決め、活動する意味を考えることが必要です。つまり、部署によって「省エネ」の意味が変わってくることを理解しましょう。

●業務の流れを見直して目標達成

では、実際に電気をなるべく削減するためにはどうすればよいでしょうか。
と考えると…やはり「働かない」のが一番です!
とはいえ、先ほども書いたように、働かない、つまり『残業などせず、作業時間を短縮する』と、電気は削減できても、生産量まで落ちてしまいます。

しかし、裏を返せば、残業しなければ効率が落ちるような生産計画を立てているのではないでしょうか。
いきなり「電気を消す」という結論を目標とするのではなく、少しでも作業効率をよくすることをまず考えましょう。

「なぜ、これだけの電気を使うのか」
「なぜ、廃棄物がこれだけ出るのか」


業務の流れを見直し、ムダが出る理由をしっかり考えていくことも、プロジェクトとしてのISO 14001への取り組みのひとつです。

経営あっての環境目標ですから、目標のための『目標』、数値上だけの『達成』は意味がありません。環境、環境といいながら、会社の業績が悪化するようでは、意味がありません。環境を大切にしつつ、業務はしっかり行ない、利益も上げていく、そこまで考えるということが、ISO 14001を『プロジェクト』として考えるということです。

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