Food Hygiene(食品衛生)、Food Fraud/フードフラウド(食の信頼性向上)、Food Defense/フードディフェンス(食品の防御)について理解しよう

Codex HACCPは、2020年に16年ぶりに改定されました。
かつての食品安全の考え方は、「食品そのものが安全であること(食品衛生)」=HACCPという考え方でしたが、国際的に食品流通が活発に行われるようになり、食品安全とは食品衛生であるという考え方だけでは、十分安全性が担保できなくなりました。

このため、食の安全を目指し、食品衛生、食品防御、食品の信頼性の3つを管理することで総合的な食品安全マネジメントシステムを実現していくという考え方が明確になりました。

衛生管理を行うことは、安全な食品を消費者に届けるために不可欠です。

食の安全に影響を与える危害や事故が起こらないよう、手洗いの徹底、食品や原料等の適切な温度での保管・管理、消毒したまな板等でのカット、十分な加熱、5S運動(整理・整頓・清潔・清掃・しつけ)の徹底などを行います。

100%安全な食品は存在しない

食品はもともと自然界にある不安定な素材を活用して、人の手により安定な品質をもつものに変換したものです。何らかのトラブルやリスクが起こりうることは必然的だと言えます。

また、現存の管理手段は、将来まで通用するとは断定できません。微生物等は徐々に耐性をもつようになります(数十年前には知られていなかった「O157」「ノロウィルス」など)。
さらに、新しい知見等により管理すべき項目が増えるということも考えられます。

このため、食品衛生対策を検討する場合には、

という2つの視点が必要だといえます。

衛生面では安全な食品であっても、産地や賞味期限等によって消費者の信頼を失うという事態が頻出しています。
産地や賞味期限の偽装(Fraud)を防止する取り組みが、フードフラウドです。

交通網が発達し、加工技術が発展し、輸送技術が開発されることによって、産地から提供できる範囲が広がり、需要は世界中に拡大しました。
しかし、農地や特産品の量には限界があります。すると人気のある地域の食品は高価格で販売されますが、知名度の低い地域の食料の価格は上がらないといったことが起こりえます。

このような状況から、利益を得るために産地を偽って売りだそうとする「産地偽装」の製品が出回ることになります。
フードフラウドは悪意を持って偽装するという点では、次の「フードディフェンス」と同じですが、単なる感情的な悪意ではなく経済的なメリットが理由です。
産地偽装だけでなく、不具合品の廃棄費用を出し惜しみ、不具合品と正常品を混ぜて提供するなど、「お金」が偽装の引き金となっているのです。

悪意を持っている人が、薬品や異物を混入する、虫や金属を入れるなど、意図的に組織に危害(脅威)を与えることで、食品が危険なものに移り変わってしまうということもあり得ます。
悪意の理由は、愉快犯、勝手な怨念、勝手な社会正義など様々ですが、「まさかあんなとこから入るなんて」「まさかうちの社員が」といった「まさか」が起こる可能性があるのです。

このような意図しない脅威を防御すること(フードディフェンス)についても備えておくことが求められています。敷地内の立入管理や供給先の評価を厳しくする、といった対策が考えられます。

悪意を持った人が会社の敷地に侵入し製品に毒を入れる、といった事態を想定しても、実際にそれを防ぐのは困難です。
外部からの攻撃を守るため、フェンスを作る、警備員をつける、といった対策が考えられますが、あらゆる対策をとろうとすると、手間やコストが際限なくかかってしまいます。

しかし、誰かが敷地内に立ち入って、製品に悪質な攻撃を仕掛けることが想定されるなら、まずすべきことは、「原料を出しっぱなしにしないこと」ではないでしょうか。
高いフェンスを作って侵入を防ぐより前に、製品の管理をしっかりすること(=フードセーフティ)を優先すべきです。
これが、FSSC 22000における「フードディフェンス」の考え方です。

また、「誤って薬を入れすぎた」「医薬品が混ざってしまった」「添加物を入れすぎた」といった、意図しないヒューマンエラーも脅威に含まれます。ただし、これらに関してはミスを防ぐための適切な管理を行うといった、ハザードの範囲内で管理を行います。

量的な側面も考えよう

食品の安全性を考える際に、供給量という量的な側面も視野に入れておくことが大切です。
食品には季節的変動があるため、時期によって生産能力以上の受注を行い、その注文に間に合わせるために無理な生産体制を組むという状況が、比較的発生しやすくなっています。その結果として、重要工程の間引きが発生したり、原料を偽ったり、過重労働によるモラルの欠如による手抜きが発生するなどにより、重大なクレームにつながる事例が、毎年必ずどこかで発生しています。

フードチェーンに対する監査では、食品安全や品質管理など一側面ではなく、経営力全般につながっていくような総合的な視点をもち、上手く改善の場として活用していくことを期待したいところです。