本ページでは、フードセーフティとは何か、フードディフェンスとは何か、そしてその2つにどのように取り組むか、といったことについて、解説しています。

フードセーフティとは

フードセーフティとは、食品安全に影響を与える危害や事故が起こらないよう、適切な温度設定や衛生管理などを行うことです。

フードセーフティを考える際に大前提となるのは、「100%安全な食品は存在しない」ということです。その理由は二つあります。

1.食品は自然界のもの
もともと食品とは、自然界にある不安定な素材を活用して、人の手により安定な品質をもつものに変換したものです。何らかのトラブルやリスクが起こりうることは必然的だと言えます。

2.管理すべきものが変化する
現存の管理手段は、将来まで通用するとは断定できません。微生物等は徐々に耐性をもつようになります。現在の管理手段は、1年後、5年後、極端にいえば、明日明後日の安全性を保証するものではありません。また、新しい知見等により管理すべき項目が増えてくるということも考えられます。
例)数十年前には知られていなかった『O157』『ノロウィルス』など

 このため、フードセーフティを検討する場合には、

  • 現在の管理手段が最適な組み合わせとなっているかどうか
  • 常により効果的な管理方策を模索する仕組みになっているかどうか

という2つの視点が必要だといえます。

量的な側面も考えよう

セーフティというと、質的な側面ばかりが強調されがちですが、食品の安全性を考える際に、供給量という量的な側面も視野に入れておくことが大切です。
食品には季節的変動があるため、時期によって生産能力以上の受注を行い、その注文に間に合わせるために無理な生産体制を組むという状況が、比較的発生しやすくなっています。その結果として、重要工程の間引きが発生したり、原料を偽ったり、過重労働によるモラルの欠如による手抜きが発生するなどにより、重大なクレームにつながる事例が、毎年必ずどこかで発生しています。
フードチェーンに対する監査では、食品安全や品質管理など一側面ではなく、経営力全般につながっていくような総合的な視点をもち、上手く改善の場として活用していくことを期待したいところです。

フードディフェンスとは

フードディフェンスとは、意図されていない、こちらの予想を超えた攻撃が外部から行われること(2007年の中国餃子事件など)に対し、敷地内の立入管理や供給先の評価を厳しくする、といった対策をとることです。

フードセーフティに関しては、自社の努力で防ぐことが可能ですが、フードディフェンス(外部からの「意図的」=つまり「悪質」な攻撃から身を守る)は難しい、と思われがちです。
悪意を持った人が会社の敷地に侵入し、製品に毒を入れる、といった事態を想定しても、実際にそれを防ぐのは困難です。外部からの攻撃を守るため、フェンスを作る、警備員をつける、といった対策が考えられますが、あらゆる対策をとろうとすると、手間やコストが際限なくかかってしまいます。

しかし、誰かが敷地内に立ち入って、製品に悪質な攻撃を仕掛けることが想定されるなら、まずすべきことは、「原料を出しっぱなしにしないこと」ではないでしょうか。
高いフェンスを作って侵入を防ぐより前に、製品の管理をしっかりすること(=フードセーフティ)を優先すべきです。
これが、FSSC 22000における「フードディフェンス」の考え方です。

フードセーフティとフードディフェンスを切り離して考えるのではなく、フードセーフティをしっかり行うことがフードディフェンスになるのだと考えてみましょう。