ISOを認証取得することによる効果(メリット)と、ISOを構築する際にデメリットだと感じることについて知っておきましょう。

1.PDCAの仕組みが作られる
2.責任と権限がハッキリする
3.第三者審査による認証がある

ISOの大きなメリットは、ISOの規格要求事項に沿って組織のシステム(ルール)を作ることによって、PDCAの仕組みが作られるということです。

PDCAの仕組み

  • Plan:組織としてのルールを作る
  • Do:そのルール通りに実施できるようにするため、作業手順を明確にし、誰もが同じ手順で作業できるよう作業の標準化を行う
  • Check:ルールが守られているかどうかをチェックする
  • Act:ルールが守られていなければ守られるようにし、守られている場合はさらによいルールへと改善させていく

このような流れが出来上がると、次のような成果が現れることが期待されます。

  • 全員が同じ手順で効率よく作業できるようになるため、時間や作業工程のムダが省けるようになる。
  • 作業に対して確認する習慣ができるようになる。
  • 教育を行う仕組みが社内に構築されるため、新入社員、派遣社員などが入ったときや、アルバイト、パート社員などの入れ替わりの激しい職場でも、短期間で他の社員と同様の作業を行えるようになる。
  • 規定書、標準書作りを通して、作業の見直しが行われ、組織の能力が上がる。
  • 何かトラブルが生じても、「たまたま」とか「誰かのせい」にするのではなく、システムとして原因を追求するため、対処がスムーズになる
  • クレーム対応を含む、顧客からの問い合わせに対し素早く正確に対処ができるようになる。

ルールが存在していない、あるいはルールはあるが、その通りに実施されていない、という組織の場合は、まずはルールを作り、ルール通り実施し、ルールが守られているかチェックすること(PDC)を徹底していきましょう

PDCができたら、「A(改善)」についても取り組んでいきます。

  • PDCを行ったうえで、ルールどおり行うことで不都合があれば見直したり、現在特に問題はなくても、もっとよいルールはないかを継続的に確認することで、さらに業務の質や労働環境も高まっていく。
  • 長期的な経営計画に基づいてマネジメントシステムを構築し、内部監査や第三者による審査等を行うことで、継続的に改善を行う企業風土が醸成される。

ISOを構築した当初は、システムを構築することで精一杯で、「効果」を実感できない企業も多いようです。
しかし、ISOシステムは継続することで効果が出る仕組みになっています。
認証取得はあくまでスタート、取得後の取り組みによって効果が表れます。

ISOの基本は「人に仕事をつける」ではなく「仕事に人をつける」です。個人ではなく組織全体を管理するために、漠然としていた業務手順・役割・責任・権限が明確になり、「個人の能力」ではなく「組織として必要な力量」がはっきりします

  • 「どこで、誰が、何をしているのか」ということが明確になるため、「ムダなもの」と「必要ないもの」がはっきりする。
  • 保存すべき書類と不要な書類が明確になるため、保管文書の管理が容易になる。
  • リーダーや上司の思いつきではなく、システムに沿って業務を行えるようになるため、トラブルが生じてもシステムとして解決しやすくなる。
  • 従業員は、リーダーのもとで働いているのだという自覚を持ち、全員が一丸となって「会社をよくしよう」と取り組むため、会社全体のムードもよくなる。

ISOを取得しているからといって、取得していない企業に比べて優れているかというと、そうとは限りません。
しかし、ISOには「第三者による審査」という最大の特徴があります
第三者(ISOの審査員)に対し、自分たちのルールを公開し、そのルールをきちんと守っていることを示すことで、「認証」がもらえます。

  • 「認証」がそのまま「信頼」になる。

「この会社は決めたルールどおりに実行している」という「証」を示すことができるというのは、ISO以外にはありません。 企業内で独自の管理システムを構築できる大手企業よりも、それが難しい中小企業による取得が目立つのもそのためです。

ISOを構築する際、組織の状況や取り組み方によっては、想定していたような効果が得られず、デメリットを感じることも。一般的に言われている4つのデメリットと構築の注意点を知っておきましょう。

1. 文書・記録が増える
2. 「人中心」の業務体制が崩れる
3. 理念が先行し現状とかけ離れる
4. すぐに効果が出ない

ISOでは、文書(マニュアル)の作成、データの記録といった文書化の作業が必要になることがあります。

これまでマニュアルや文書がない、もしくはあったとしても厳密に従っていない場合や記録などを明確に残さず仕事してきた場合は、文書作成という業務が増えるため、わずらわしさや手間を感じることがあります。

  • 文書は、ISOに必要だから作るものではなく、本来業務に必要だから作るもの。無駄な文書は作る必要はない
  • ISOのために1から文書を作るのではなく、既存のマニュアルや作業手順をなるべく活用させ「今できること」から行うことで、文書化は楽になる。
  • 記録が煩わしいと感じるのは、作業する人が記録の意味を実感できていないから。記録はトラブルの際に原因をすぐに把握できたり、第三者に証明するときに役立つということを認識しよう。
  • トラブルの処置だけでなく、記録をデータとして活用することで自社の強みや弱みが明確になる。記録はISOだけでなく業務改善に役立てていこう

ISOでは、業務を見直して「標準化」を行い、各人の責任権限、役割を明確にしていきます。

「○○の仕事を□□さんが担当する」というのが本来の役割分担ですが、「□□さんに担当してもらう仕事は…○○にしよう」といった、人を中心として業務の割り当てが行われている会社があります
また、「できる社員」「経験のある△△さん」がいる会社では、その人を中心に仕事がまわっていることもあります。

このような会社では、ISOを導入することでこれまでのやり方が崩れ、仕事がやりにくくなることもあります。

  • 現状ではうまく仕事が流れているとしても、景気等の外的要因や、派遣社員、中途入社、早期退職者の増加などの内的要因によって、組織を取り巻く状況は刻々と変わっていく。誰がやっても同じ仕事ができるようにするため、業務の標準化を行っていこう。
  • 「できる△△さん」のやり方は、個人の手腕に留めておくのではなく、組織全体のマニュアルとして全員が共有できるような仕組みを作っていこう。

ISOではリーダーシップが重視されるため、リーダーのビジョン(企業の方向づけ)が求められます。

リーダーが掲げた目的・目標が理想に走りすぎな(現実よりかけ離れている)場合、既存業務とのギャップが生じ業務に影響が出ることもあります。
ISOで高い目標を掲げても、実際には実現不可能で、逆にやる気を失ってしまった、というケースも見られます。

  • 目標を立てる際は、会社の技術上の選択肢、財政上の諸事情を配慮した上で、理念に沿った具体的目標を立てていこう。

マニュアルを作成し、システムを運用し、ISOを認証取得することで、業務の見直しが行われたり、コミュニケーションがうまくいくようになったりというよい効果が表れるようになります。

ISOを導入しても会社は何も変わらない…と感じる組織も少なくありません。単にマニュアルどおりに作業し、記録をとり、更新前にはシステムをチェックする、という作業の繰り返しだけで、ISOが何の役にも立っていないという企業もあります。

  • ISOを構築してもすぐに効果は表れないことが多いが、「認証取得」という結果だけで充分だと考えてみよう。PDCAのP(構築)とD(実施)を徹底させていくだけでもよい。
  • 大切なのは継続的改善C(内部監査等)やA(レビュー、改善)を続けていくことで、少しずつ効果が出ていくということを認識しておこう。

ISOの取り組み方を間違えると、上記のようなデメリットが生じやすくなります。
例えば、経営者の理解がない、一部の担当者しかISOに関わっていない、認証取得のために『形だけのISO』を構築した、等といった場合は、メリットを感じにくいでしょう。

ISO構築でメリットを得たいとお考えなら、「うまくいくISO」の手法をぜひ取り入れてみてください