- 交通事故防止の対策に向けて
世界では今、交通死亡事故撲滅への機運が高まっています。日本でも飲酒運転や居眠り運転など交通死亡事故に関するニュースは頻繁に報道されていますが、国際的にはさらに深刻な状況です。 国際的なNGOによる報告資料によれば、全世界で毎年約130万人以上の死亡者、 約5,000万人の負傷者を出していると言われています。 これは戦争よりも多い数字です。
このような状況を受け、国連総会では2010年3月に『道路交通安全10ヵ年活動』を 採択しました(2011年からスタート)。日本を含めた先進国が交通事故防止のノウハウや成果を積極的に共有していくことが求められています。 たとえば、関連法規制の罰則強化や自動制御による停止装置などの技術開発 といったことです。
- ISO 39001とは
そのなかで、効果が期待されるものとして注目されているのが、 「道路交通安全マネジメントシステムISO 39001」です。
この規格は、「交通事故による死亡・重傷事故を撲滅させること」を目指し、 道路交通に関わるすべての事業者に対して、事故が発生しうる可能性とそれを引き起こす要因(リスク源)をリストアップし、 各リスク源を適切に管理することにより、交通事故の発生を抑制していこうというものです。
企業が重大な交通事故を起こせば、 社会的信用を失い、遺族等に対する多額な保障が求められ、業務に大きな支障をきたす… ということは、言うまでもありません。このようなことを防ぐため、何らかの対策は必要です。
単に「交通安全に取り組みましょう」ではなく、マネジメントシステムとして総合的に交通安全を目指していくことから、保険会社等からの期待も高まっています。
- ISO 39001の対象企業
ISO 39900の対象となるのは、交通事故を発生させてしまう可能性のある運送会社などだけだと考えられがちですが、自動車事故はどのような時にでも起こります。
例えば、- 営業活動をしているときに事故に巻き込まれる
- 旅館や学校、幼稚園等の送迎時に事故を起こす
- ショッピングセンター等の駐車場で事故が起きる
対象組織としては、以下のような企業が上げられます。- 乗客・貨物輸送に関わる組織(運輸会社、トラック・バス・タクシー会社など)
- 自動車で営業活動や自社配送を行っている組織 ・自動車の設計・製造に関わる組織(自動車メーカー、部品製造会社など)
- 駐車場を有する商業施設・組織(駐車場のあるスーパーマーケット、駐車場管理会社など)
- 生徒が通学のために道路を使う塾・学校
- 道路標識製造会社、道路管理者など
- ISO 39001の構成
規格は10章構成となっており、ISO 9001:2015、ISO 14001:2015等と同じく共通テキスト化されています。
ここでは、ISO 39001のメインとなる「6.計画」より、計画のプロセスをご説明します。
●ISO 39001 計画のプロセス
1)パフォーマンスレビュー(現状把握)
これまでは無事故でも、これからも無事故とはいえません。まずは「なぜ、これまで事故が起きていないのか」「何が管理できているから事故が起きなかったのか」といった現状を分析していきます。
2)リスクと機会を決定
将来的に危険の可能性があるものについても、リスク(死亡事故の原因となるもの)および、機会(チャンス:改善につながる要因)を明確にします。リスクとしては、営業車両の増加、営業マン一人当たりの移動範囲の拡大など、機会(チャンス)としては、本社隣接道路の拡幅工事、歩道の整備などが挙げられます。
3)RTS(Road Traffic Safety)パフォーマンスファクターの選択
4)分析
パフォーマンスファクターとは、危険を管理していくために管理すべき安全指標のことです。リスクを回避すれば好ましい結果(目標)になるという考え方に基づき、先に指標を決めて、そのために何をするかという目標改善計画を作ります。
ISO 39001の取組は「交通安全」と限定されているため、これまでの諸研究から様々な指標がリストアップされています。これらの指標のなかから、リスク状況を踏まえ、自社の管理指標としてパフォーマンスファクターを選択します。
ISO 39001の規格構成
1.適用範囲
2.引用規格
3.定義
4.組織の状況
5.リーダーシップ
6.計画
7.支援
8.運用
9.パフォーマンス評価
10.改善
1.適用範囲
2.引用規格
3.定義
4.組織の状況
5.リーダーシップ
6.計画
7.支援
8.運用
9.パフォーマンス評価
10.改善