ISO 14001は環境保全を目的としたマネジメントシステム規格。ISO 14001の基本、考え方、規格要求事項の内容について知っておきましょう。

ISO 14001で環境に与える影響を適切に管理する

ISO 14001(環境マネジメントシステム/Environmental Management System)の目的は顧客が望まないもの(環境に悪影響を与えているもの)を適切に管理することです。
顧客が望まないものとは、組織を取り巻くすべてのヒト(地域住民、利害関係者)、モノ(水、空気など)に対し、組織が与えている『環境影響』のこと。
それを明確にし、悪い影響を与えているのであれば適切に対策し、実行することが、ISO 14001システムです。

ISO 14001規格要求事項の内容を知ろう

ISO 14001では、ISO 14001規格要求事項に沿ってPDCAサイクルを構築します。
ISO規格要求事項は、すべてのISOマネジメントシステムで共通の構成(全10章)となっています。
システム構築に関わるのは、4章~10章ですが、他のISO規格と共通(類似)の部分と、規格独自の内容が書かれている部分があります。

ISO 14001では、特に「6章 計画」がメインとなっています。
組織が周囲に与える環境影響を調べ、それに対する対策を計画するまでが6章環境対策を実行していくのが8章、というのがISO 14001のざっくりとした流れです。

以下では、PDCAの流れに沿ってISO 14001規格を簡単に説明しています。
他のISO規格と共通(類似)の内容、および詳細な説明を行っている部分についてはリンクを貼っていますので、リンク先をご覧ください。

Plan

組織について整理する(4.1~4.4)

顧客が望まないものを提供しないようにするという、ISO 14001の目的を達成するため、まずは環境に関連して組織が関わっている状況を整理します。外部および内部の課題(好ましい影響と好ましくない影響)を明確にしていきます。

  • 整理すべき課題
    • 騒音、排ガス、CO2の排出や水銀等、組織が周辺地域に対して与えている影響
    • 立地上の問題点から環境に与える影響
    • 自社に関連する利害関係者(会社が排出したものに対し影響を受ける人々=地域住民)や、地域環境(水、空気など)に対し、組織が与えている影響
    • すべての利害関係者に対し関連する要求事項を満たせるようにするため、順守義務の理解

これらを考慮したうえで、適用範囲(ISO 14001を組織のどの範囲で構築するか)を決めます

リーダーシップを明確にする(5.1~5.3)

ISOでは、トップマネジメント(経営層)が強くかかわり、説明責任を持つことが求められます。

トップマネジメントは、組織が行う環境保護について「環境方針」で表明します。また、組織図や業務分掌を整えて、各役割の責任や権限を明確にします。

計画を作る(6.1~6.3)

リスク・機会に備える

環境目標や管理すべき事項を決めて実行しようとしても、常に組織が意図したとおりに業務を行えるとは限りません。
新設備の導入などの「内的変化」、法律の改定などの「外的変化」、災害の発生などの「社会的変化」などにより、必ず何らかの不確実な出来事が生じ、自組織で定めた環境計画どおりに行われない事態が生じることは十分考え得ることです。
これらを想定して備えておくことが、リスク及び機会に備えるということ。どのような機会やリスクがあるか、予期しない状況が生じたとき組織はどのように対処すべきかについて計画していきます。

環境側面・環境影響を決定する

好ましくないもの(環境への悪影響)を適切に管理するための対応策を決めていきます。有害か有益かに関わらず、周辺地域に何らかの変化を与えうる環境側面を「環境影響」として認識し、管理を行います。

  • 環境側面を抽出する
    • 環境影響のもとになるものを、環境側面としてすべてピックアップします。
    • 環境側面とは、組織の活動を行ったり製品やサービスを提供する上で排出される望ましくないもの(廃棄物、環境に害を与える物質など、組織活動が環境に与えている影響、将来与えるかもしれない影響)のことです。
    • 環境に関する法律も調べ、順守義務を徹底します。
  • 著しい環境側面を決定する
    • 抽出した環境側面の中で、特に大きな環境を影響を与えるものを「著しい環境側面」として管理方法を決めます。
  • 管理方法を決定する
    • 著しい環境側面は、以下の2つのどちらかで管理を行います。
      • できる限り削減できるよう、目標を定めて管理するもの
      • 現状を悪化させないよう、 日常業務の中で管理するもの
環境影響と環境側面
  • 著しい環境側面の管理方法を決めるための考慮事項(例)
    • どのような環境事故が起きる可能性があるか
    • どのくらいの頻度で起こる可能性があるか
    • 仮に事故が起こった場合、地域に与える影響はどのくらいか

順守義務への対策

環境活動を行う上で、またコンプライアンスという面でも、法に基づいた活動を行うのは必須です。

環境側面に関する法律をすべてピックアップし、特定した順守義務のうち、環境側面に適用されるものを決定します。自組織の活動に関連する法律や法規制(リサイクル法、廃棄物処理法 など)を調べることで、周囲に悪影響を与えている可能性を削減し、法令違反というリスクを避けることにつながります。

ISO 14001における主な法令は環境の法規制ですが、各種環境問題や生活そのものを間接的な環境と捉え、組織が順守すべき、あるいは順守することを選んだその他の法令も含まれます。

環境目標を設定する

組織が長期的に取り組む目標として、具体的にすべきことを環境目標」として定めます。

支援体制を整える(7.1~7.5)

  • プロセスを管理しリスクや機会に対応するために必要な支援体制を整えます。
    • 組織内の資源(人材、インフラストラクチャー、環境、監視測定機器、知識など)、人々の力量や教育訓練体制、コミュニケーションの方法など
  • これらを組織内の人々が共有し、組織外(第三者)に対して明確に示すために、必要な事項について文書化します。

Do

運用するための計画や手順を整える(8.1~8.2)

実際に組織の各部署や各担当でシステムを運用できるように、具体的な計画や手順を整えていきます。

  • 製品やサービスのライフサイクル(原材料の取得、設計・開発、生産、輸送/配送(提供)、使用、使用後の処理及び最終処分までの連続した各段階)で、できるだけ環境への影響を低減することを考慮します。
  • 外部委託する場合は、例えば「商品を購入する場合は、エコ商品やグリーン商品を率先して購入することを伝える」「 荷物を集配する運送業者に対し、アイドリングをしないように伝える」など、必要なことを伝達できるようにします。
  • 緊急事態が生じた場合の対策についても定めます。

Check

評価する(9.1~9.3)

  • 日常的に実施する活動(環境パフォーマンス)について、指標を決めて評価できるようにします。
  • それらの結果をトップマネジメントに報告し、トップマネジメントは改善方向を指示して、プロセスを見直します。

Action

改善する(10.1~10.3)

  • 環境マネジメントシステムの目標を達成し、要求事項を満たすため、また、不適合など好ましくない状況を修正、防止、低減するために改善を行います。
  • ミスやトラブルといった不適合に限らず、時代の流れや組織を取り巻く様々な状況の変化に合わせ、システムを絶えずアップデートしていく仕組みを作り、マネジメントシステムを最適化していきます。