ISOにおける評価の考え方と、パフォーマンス指標の設定について理解しましょう。

ISOを構築する際、PDCAの「PLAN」「DO」に関しては行われていても、「CHECK」「ACT」が蔑ろにされているケースが多々あります。形だけのチェックや改善を行っていると、ISOシステムがきちんと活用されているとは言えません。

ISOの要求事項において「C」に該当するのは「9.パフォーマンス評価」です。
ISO要求事項「8. 運用」において、自社で定めた目標や、規格のテーマごとの様々な取り組みに対して実行した結果、良くなったのか、うまくいったのかといった成果(パフォーマンス)を評価します。
9章では「ルールが守られているかどうか」「効果が出ているかどうか」「もっとよい方法がないかどうか」など、さまざまなことを確認し評価していきます。

ISO規格要求事項では、評価は以下の3つの視点によって行われるべきとされています。

自己(自部門・自社)による評価です。
例えば、日報の中で定期的にデータを把握し、問題がないか、課題はどこにあるかなど、通常業務を通じて日常的に評価を行います。自己(自部門)で目標を定め、それを達成できたかを評価します。
目標やKPI(キー・パフォーマンス・インディケーター)などの監視指標により、うまくいったかどうかのチェックを行います。

POINT

自分たちが取り組んだ結果は、まず自分たちでチェックしよう!

製造部、営業部、総務などの各部門において、目標が達成できたか、提示通りにできているか、日々のチェックをしっかり行い、やりっぱなしにしないこと。
きちんとフォローすることによって、日常的に行うと決めた手順が守られているかどうかを確認しよう。

通常業務の一環で評価を行うと、どうしても目の前の仕事に追われ、評価に甘えが出たり、業務に追われてデータをうまく活用できないことがあります。
自己ではなく他者(通常業務に普段関わっていない他部署の人)にチェックしてもらうことで、見落としがちな課題を見つけていきます。
これが内部監査です。内部監査では、業務を離れた立場から、普段隠れがちな問題を見つけ、改善に直結させる取り組みを行います。

組織のあるべき姿や方向性(意図した結果)を決めているのはトップ(上司)です。
意図した結果に向けて、パフォーマンスがきちんと行われているか、目標はクリアしたか、達成できているかについて、上司が総合的な視点で定期的に評価を行います。

9.1.1 パフォーマンスを評価する(抜粋)

組織は、品質マネジメントシステムのパフォーマンス及び有効性を評価しなければならない。

パフォーマンス評価とは、自分(自社・自部署)のプロセス(業務)がうまくいっていることを、何をもって判断しているか(指標)を明確にすることです。

パフォーマンス評価の指標は、基本的には自社で決定します。
ただし、規格によって指定されている指標もあります。それぞれの規格にはテーマ(意図)があり、そのテーマを満たした指標を設定します。

規格テーマ(意図)評価の指標
ISO 9001 顧客が望む製品・サービスを提供し続けること(顧客満足)顧客満足度、クレームの発生件数
ISO 14001顧客が望まないもの(環境への悪影響)を適切に管理すること(環境保全)環境側面への取り組み、コンプライアンス、環境法規の人種評価
ISO 45001従業員の労働安全衛生を第一に考えること(労働安全) 労災の件数、ヒヤリハットの件数
各規格と評価の指標

パフォーマンス評価とは、パフォーマンス(成果・業績)という言葉から「現状よりもどれだけ改善されたか」という目標管理がイメージされることもあります。また、「パフォーマンスが良い、または悪い」といった言い方をするため、目標に向かって取り組んでる成果といった捉え方をしてしまうこともあります。

しかし、ここでのパフォーマンス評価とは、プロセス(自分の業務)がうまくいっていることを、何をもって判断しているか(指標)を明確にすることです。さまざまなデータを評価するときに相応しいものをパフォーマンス指標とします。

どんな人にも、どんな部署にも「今日は仕事が上手くいった!」と万歳したくなるようなことがあるでしょう。
「大口の受注がとれた」「目標利益をクリアできた」とか、「新人がトラブル時にしっかりと対応してくれてた」「いつもより問い合せが多かった」、あるいは「クレームが発生しなかった」といったことも考えられます。

プロセスや仕事がうまくいっているかを、どのように判断していますか?
このような「最も仕事がうまくこなせたと実感できるもの」がパフォーマンス指標です。

そして、その指標を測定、分析するタイミングを決めます。

評価を行う際は、「クレーム件数をデータ化している」「歩留まり等を把握している」といったことだけではなく、傾向を見るようにしましょう。

昨年、あるいは先月と比べてどうだったか、といった傾向を分析し、総合的に他の指標との関連を調べることで、時系列的、総合的な評価を行います

9.1.2 顧客による評価(抜粋)

組織は、顧客のニーズ及び期待が満たされている程度について、顧客がどのように受け止めているかを監視しなければならない。

いくら素晴らしいパフォーマンス指標を掲げ、結果を出せたとしても、その結果に満足しているのは自分だけ…では意味がありません。
提供している製品やサービス、あるいは会社そのものに対する顧客の評価を常に確認する必要があります。

例えば、「不良率が低いこと」を指標としても、不良率の低さと顧客満足度の高さは必ずしも連動するとは限りません
指標を達成するために、従来は廃棄していたものを提供したりすれば、不良率は下がっても顧客満足度も下がるのは当然です。

また、指標として「納期順守」を設定したとしても、納期に合わせるため目指すべき基準に到達しないまま出荷してしまうと、顧客の満足度は下がるでしょう。

自部門の内外の評価を踏まえて活動の妥当性を評価しましょう。

9.1.3 顧客による評価/分析及び評価(抜粋)

組織は、監視及び測定からの適切なデータ及び情報を分析し、評価しなければならない。

指標として設定べき数値は、組織や個人の業務内容によって様々(受注、売上の件数、工程内の不適合、歩留まり など)ですが、指標設定の際には「分析および評価できるような指標(9.1.3)」を決めることが重要です。
立派なパフォーマンス指標を設定しても、それを分析、評価、改善へとつなげることができなければ、ムダな指標になってしまいます。
個別のデータをみて、うまくいっているかどうか一喜一憂しても仕方ありません。
指標を設定する際には、監視結果をどのように活用するかを考慮しましょう

要求事項の順番に従うと、「9.1.1」で指標の対象を決め、その評価の結果を「9.1.3」で活用するといった流れになりますが、「9.1.1」と「9.1.3」は同時に考えると、指標にすべき対象が決めやすいでしょう。