「意図した結果」を達成する

4.1 組織の状況(抜粋)

組織は、その目的及びその戦略的な方向性に関連し、その品質マネジメントシステムの意図した結果を達成する組織の能力に影響を与える、外部及び内部の課題を明確にしなければならない。

ISOでは、「組織とは、自らの目標を達成するため,責任,権限及び相互関係を伴う独自の機能をもつ,個人又はグループ」(3.2.1)と定義されています。
ここでいう「自らの目標」とは、ISO要求事項の「意図した結果」のことです。

つまり、
「自分たち(組織)は何を達成したいのか」
「そのために何が必要か、何が妨げになっているのか」
を明確にすることが、ISOマネジメントシステムのすべての出発点になります。

意図した結果(目標)は、企業によってさまざまです。

  • 地域売上No.1を目指す
  • 地域社会に貢献し続ける企業でありたい
  • 高い技術力で顧客の信頼を得たい …など

これに対して、現状には次のような要素があります。

  • 必要なもの:専門知識を持つスタッフ、整備されたIT環境
  • 阻害要因:人材不足、技術力不足、資金難
  • 対策の方向性:人材育成計画、技術提携、制度融資の活用

このように、理想(意図した結果)と現状のギャップを見える化することで、組織としての戦略的な方向性が自然と浮かび上がってきます。

「意図した結果」を達成するには、まず組織の内部と外部の状況(課題)を把握することが必要です。
要求事項4.1が求めているのは、この“状況理解”です。

  • 内部(社内)の状況
    • 自社の強みは何か
    • 弱みはどこにあるのか
    • 強みをどのように活用し、弱みをどう補うか
  • 外部(社外)の状況
    • 社会や市場、法律、技術などがどんな影響を与えるか
    • 顧客や取引先は何を求めているか
    • 将来起こりうる変化にどう備えるか

外部の状況には、後述する利害関係者の要請や期待も含まれます。
組織の現状を深く理解することは、変化というリスクに対応するための最大の武器になります。

変化こそ最大のリスク

「利害関係者」について明確にする

4.2 利害関係者のニーズや期待の理解(抜粋)

組織は、利害関係者及びその関連する要求事項に関する情報を監視し、レビューしなければならない。

組織の都合だけで仕組みを整えても、うまくいきません。
ISO9001の4.2では、利害関係者のニーズや期待を理解することが求められています。

利害関係者には次のような人々が含まれます。

  • 顧客
  • 製品やサービスのエンドユーザー(消費者)
  • 供給者・取引先
  • 従業員
  • 株主・銀行
  • 地域住民 など

それぞれが異なる期待や要望を持っています。
たとえば、顧客が求める品質レベルと自社が掲げる目標が食い違っているなら、

  • 方向性を調整する
  • その品質を望む顧客層を新しく開拓する

といった判断が必要になります。
利害関係者の声を丁寧に拾い、適切にコミュニケーションすることは、企業の信頼と価値を高め、持続的な成長につながる重要な要素です。

「これこそが我が社の課題」を探そう

組織の課題や利害関係者が整理されると、「自社は何に取り組むべきか」が見えてきます。
課題を洗い出す際に意識したい視点は次の2つです。

  • 組織の目的や戦略的方向に関連しているか
  • 品質マネジメントシステムの意図した成果の達成に影響を与えるか

ここで重要なのは、「確かにこれは自社の課題だ」と腑に落ちるものを選ぶことです。
そうした課題こそ、日々の業務改善や目標管理の“軸”として活用でき、ISOの運用が「現場で生きる仕組み」へとつながっていきます。