ISOを構築する際、組織の状況や取り組み方によっては、想定していたような効果が得られず、デメリットを感じることも。一般的に言われているデメリットと構築の注意点を知っておこう。
文書・記録が増える
ISOでは『文書(マニュアル)』の作成、データの記録といった文書化の作業が必要になることがあります。
文書・記録が増えることでデメリットを感じる理由
これまでマニュアルや文書がない、もしくはあったとしても厳密に従っていない場合や記録などを明確に残さず仕事してきた場合は、文書作成という業務が増えるため、わずらわしさや手間を感じることがあります。
文書・記録の作成はここに注意して取り組もう
- 文書は、ISOに必要だから作るものではなく、本来業務に必要だから作るもの。ISOのために1から文書を作るのではなく、既存のマニュアルや作業手順をなるべく活用させ『今できること』から行うことで、『文書化』は楽になります。
- 記録が煩わしいと感じるのは、作業員が記録の意味を実感できていないから。記録を残すことで、トラブルの際に原因をすぐに把握できたり、第三者に証明するときに役立つということを、記録者に認識してもらいましょう。
- トラブルの処置だけでなく、記録をデータとして活用することで、自社の強みや弱みが明確になります。せっかく記録をとるなら、ISOだけでなく業務改善に役立てていきましょう。
『人中心』の業務体制が崩れる
ISOでは、業務を見直して『標準化』を行います。また、各人の責任権限、役割を明確にすることで、『システム化』していきます。
責任権限を明確にすることでデメリットを感じる理由
『○○の仕事を□□さんが担当する』というのが本来の役割分担ですが、『□□さんに担当してもらう仕事は…○○にしよう』といった、人中心で業務が行われている会社があります。また、『できる社員』『経験のある△△さん』がいる会社では、その人を中心に仕事がまわっていることもあります。
このような会社では、ISOを導入することでこれまでのやり方が崩れ、仕事がやりにくくなることもあります。
責任権限の明確化はここに注意して取り組もう
- 現状ではうまく仕事が流れているとしても、景気等の外的要因や、派遣社員、中途入社、早期退職者の増加などの内的要因によって、組織を取り巻く状況は刻々と変わります。誰がやっても同じ仕事ができるようにするため、業務の標準化を行っていきましょう。
- 『できる△△さん』のやり方は、個人の手腕に留めておくのではなく、組織全体のマニュアルとして全員が共有できるような仕組みを作っていきましょう。
理念が先行し現状とかけ離れる
ISOではリーダーシップが重視されるため、リーダーのビジョン(企業の方向づけ)が求められます。
目標設定でデメリットを感じる理由
リーダーが掲げた目的・目標が理想に走りすぎな(現実よりかけ離れている)場合、既存業務とのギャップが生じ業務に影響が出ることもあります。
ISOで高い目標を掲げても、実際には実現不可能で、逆にやる気を失ってしまった、というケースも見られます。
目標設定はここに注意して取り組もう
目標を立てる際は、会社の技術上の選択肢、財政上の諸事情を配慮した上で、理念に沿った具体的目標を立てていきましょう。
すぐに効果が出ない
マニュアルを作成し、システムを運用し、ISOを認証取得することで、業務の見直しが行われたり、コミュニケーションがうまくいくようになったりという効果が表れるようになります。
デメリットを感じる理由
ISOを導入しても会社は何も変わらない…と感じる組織も少なくありません。単にマニュアルどおりに作業し、記録をとり、更新前にはシステムをチェックする、という作業の繰り返しだけで、ISOが何の役にも立っていないという企業もあります。
ここに注意して取り組もう
ISOを構築した最初の年は、結果を出そうと必死になる必要はありません。『認証取得』という結果だけで充分です。PDCAのP(構築)とD(実施)を徹底させていくだけでもよいでしょう。
大切なのは、継続的改善です。C(内部監査等)やA(レビュー、改善)を続けていくことで、少しずつ効果が出ていくということを認識しておきましょう。
『メリットのある』ISOのために
ISOの取り組み方を間違えると、上記のようなデメリットが生じやすくなります。
例えば、経営者の理解がない、一部の担当者しかISOに関わっていない、認証取得のために『形だけのISO』を構築した、等といった場合は、メリットを感じにくいでしょう。
ISO構築でメリットを得たいとお考えなら、「うまくいくISO」の手法をぜひ取り入れてみてください。